きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛はそこにある…je crois 2

「日本から緊急連絡です!」

薫は身を翻すとメイドさんの案内した部屋に消えて行った。私もすぐ後を追って部屋に入った。受話器を握り返し、立ち尽くす薫がいた。

「おいっ!嘘だろっ?…分かった。すぐに戻る。っ…」

薫は受話器を置くと胸を押さえてその場にうずくまった。顔色はもう真っ青になっている。

どうしようっっ! 発作だわ!

シャルルを呼んで来なきゃと思って急いで私は部屋を出て行こうとしたら薫が私のスカートの裾を掴んだの。
振り返ると薫は呼吸を荒げ、冷や汗でその額を濡らしながら絞り出すような声で言った。

「大丈夫だ。発作の前兆みたいやつだ。すぐに収まるからここにいてくれ。それより日本にすぐに帰る。兄貴が危篤だ」

兄上が?!
あれからずっと眠ったままだと言っていた。意識はまだ戻ってないって薫はここに来てからシャルルに話していた。
その兄上が危篤?!
それじゃ一度も目覚める事もなく、薫に会うこともなくいってしまうの?
そんな…。

薫はゆっくりと呼吸を繰り返している。
顔色も良くなってきたみたいだわ。でもシャルルが手術してからは発作もないって言ってた。それでもさっきみたいな発作の症状が出るって事は兄上の危篤の知らせは薫にとって相当なショックなのは言うまでもなかった。

呼吸も落ち着いてきて、その様子からもう平気なのは分かったんだけど心配だった。薫の身体も兄上の事も。
兄上が危篤って大変じゃないっ!急いで日本に帰らないと薫は今度こそ2度と兄上に会えなくなってしまうかもしれない。でもどんなに急いでも羽田まで12時間はかかってしまうわ。


シャルルとガイも騒ぎを聞きつけて駆け付けてくれた。シャルルは素早く薫の横に跪くと手首を掴み脈を取りながら矢継ぎ早に質問をしていく。

「まだ痛むか?どの辺りだ?呼吸は?吐き気は?何があったんだ?」

シャルルは薫の様子を気にしながら青灰色の瞳で私に何があったのか問いかけていた。
薫は自分はいいからと言い、日本へジェットを飛ばして欲しいとシャルルに言った。

「日本から緊急電話がきた。兄貴が危篤だそうだ。すぐにでも日本に向かいたい。シャルル、お願いだ。」

薫の緊迫した様子を受けてシャルルは素早く何処かへ電話を掛けるとジェットの準備と医療チームの手配、医療器具の指示をしている。このままシャルルも日本に行って兄上を助けてくれるんだわ。
12時間もかかってしまうのが心配だけどシャルルが居てくれればきっとどうにかしてくれるはずだわ。私も薫に付き添って行くつもりだった。こんな時は特に側にいてあげなくちゃ。きっと不安でいっぱいなはずだもの。私が日本行きを決意していると、シャルルの携帯がプルッと鳴った。シャルルはフランス語で話していたから私にはさっぱりとわからなかったんだけど、一言二言会話するとすぐに終わった。

「フライト許可が降りた。出発は45分後だ。近くの飛行場まではヘリで向かう。急げ。今は1分でも惜しいからな。」

急がないと兄上が大変よ!
どうかシャルルが到着するまで頑張っていてちょうだい。






つづく