プルップルッ…
「私だ。どうした?」
シャルルは事務的な受け答えをする。普段から私たちの朝はなかなかやって来ない。微睡みの中にいた私たちを引き剥がそうとする内線電話の音が部屋に鳴り響いた。
忌々しげに受話器を取るシャルル。
「構わない、しばらく待たせておけ。
私は忙しいと伝えろ。」
寝起きのシャルルは機嫌が悪い。でも今朝は私との時間を邪魔されたから余計に不機嫌みたい。初めてシャルルと結ばれてからまだ半月程しか経っていない。毎日一緒に眠り、朝はのんびりと過ごすのが日課になっていた。クスッ…私がシーツに包まりながら笑っていたらシャルルが唇を重ねてきた。
「何がおかしいんだい?」
私が別にって知らんぷりしていたら
「言わないつもりだな。それなら…」
シーツごと私を抱き寄せると胸の中へすっぽりと包み込んだ。
プルップルッ…
再び内線電話の音がシャルルを現実へ引き戻していく。だけどシャルルは電話に出ようともしないで私を抱く腕に力を込めた。
「ちょっとシャルル、電話っ!」
私が腕の中から抜け出そうとしたけどシャルルの力には全くかなわない。
「放っておけばいい。早朝の面会など非常識だ。待たせておけばいい。」
あら、誰か会いに来ているのね。お気の毒ね。シャルルは朝は本当に活動しないものね!
「せめて面会の時間だけ決めてあげたらどうなのよ?会わないつもりじゃないんでしょ?」
私は上目遣いにシャルルに聞いてみた。
するとシャルルったらまるで他人事のように言うのよ!
「オレの知り合いじゃないからね。」
え?
私は意味が分からなかった。
シャルルの知らない人が早朝から面会を求めてるって変じゃない?
私は訳がわからず、首を傾げるばかり。
仕方がないといった感じでシャルルは説明をしてくれたんだけど私は大絶叫!!
「響谷って男が玄関ホールで騒いでいるらしい。そいつはマリナはいるのか?シャルルを出せっ!って騒ぎ立て困り果てた執事がオレに内線して来たってわけ」
きゃーっ!! 薫が来ているのっ?!
何の連絡もしない私を心配してパリまで来てくれたんだわっ!!
私は大急ぎでシャルルの腕を振り払うと着替えをして出迎えに行こうとしたのよ
!だけど、さすがにこの格好じゃ出られない。見兼ねたシャルルが内線電話をしてくれた。
「さっきの客はアプローズに案内しておくように。」
「マリナこれでいいだろ?奴を応接で待てるようにしたから。」
そういって私の腕を掴んで抱き寄せるシャルル。
私はベットに舞い戻ってしまった。
じっと見つめられているとシャルルの青灰色の海に吸い込まれてしまいそうになる。シャルルは艶やかな瞳で私を捉えて動けなくする。
頬を傾けて唇が触れそうな所で私は手で自分の唇を隠すとシャルルの形の良い唇が私の手の甲に微かに触れた。薫が待ってるんだもの。シャルルのペースに乗ったらダメ。それなのに私の手首を掴んで退かすと強引に唇を重ねた。
その時扉をノックする音が聞こえてようやく私を放してくれた。
「仕方ない、マリナ先に行っておいで。積もる話もあるだろう。オレも後で顔を出す。」
執事さんにアプローズまで案内してもらった。本邸は広すぎて私は迷子になりそうねって執事さんに話したら
アルディ家には面会を待つ控えの間の他に特別なゲストを迎える部屋、接見の間が行くつかあるんだって。その1つがアプローズ。青い薔薇の名前からつけられていると教わった。
他にもグレッチェン、レトランジェ、ヴェラヴィーダやティアパールなど薔薇の名前が付けられた部屋があるそう。その中でもアプローズは滅多に使われる事がなくシャルルは貴賓にしか使わないんだって。
私はそれを聞いて思ったの。私がパリに行く事を悩んでいた時に背中を押してくれた薫にシャルルは少なからず感謝しているみたいで嬉しかった。
散々待たせてはいるけどね!
重い扉を開くと懐かしい顔がそこにいた。
「か、か、かおるーっっ!」
つづく
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みなさま、こんばんは!
毎日寒くなる一方ですね。風邪など引かないように気を付けて下さいね!
きらは喉をやられました(>_<)
声が掠れてハスキーボイスでした。
完結から半月ほど経ったシャルルの私室でのやり取りです。
やっぱり シャルル>マリナ な関係なのかなぁ~なんて想像しながら。
久々に妄想したけど、やっぱり楽しいひと時でした