2人で迎えた朝は今日が初めてじゃない。逃亡生活をしていた時だってシャルルと何度も朝を迎えたわ。
あの華麗の館では同じベットだったし。
だけど今日迎える朝は特別な朝…。
ふと目を開けるとシャルルと目が合って私は焦ったわ。やだ、シャルルったら珍しく早起きしたのね。それとも私が遅いのかしら?
「今、何時なの?」
「4時だよ。まだ早いからもう少し眠る?それともバスを使う?」
4時ってまだ夜中じゃないっ!
いくらなんでも早起きしすぎじゃない?ってシャルルに言おうとして思ったのよ。もしかしてシャルルは寝ていないんじゃないかって。
「シャルルあんた、寝てないの?」
たまらないと言った顔をして私の髪を撫でながら、
「マリナの寝顔を見ていたくてね。
それに君が隣で眠っていたら平静でいられない。オレも男だしね。」
そうだっ!
私は眠ってしまったのよね…というか気絶したと言うのかしら。
「無理をさせてすまない。
バスを使うなら準備しようか?」
うわっ…やけに、優しい!
このまま至近距離でシャルルを感じていたら息が苦しくなりそうだわ。
「そうね。ちょっと浴びてくるわ。
自分でやるからシャルルは寝ていて」
私は近くにあったローブを手繰り寄せてバスルームへと向かった。
まだドキドキが収まらない。
教えてもらったバスルームは昨日私が使ったのとは違っていた。
1人で入るのには広すぎて私は落ち着かない感じ。すでにお湯は張ってあって体を滑り込ませた。ボコボコとジェットバスの泡が体を包み込み心地よい。
「あぁ…気持ちいい…」
自然と言葉が出た。入るまでは億劫だけど入ってしまうとホッとするのよね。
目を瞑ると昨夜のシャルルとの事を思い出して頬が熱くなる。
その時、ふわっと爽やかな香りが鼻先をかすめた。目を開けるとさっきまで透明だったお湯は白濁色に変化していたの!
「湯加減はどうだい?マドモアゼル。」
振り返ればシャルルが後ろにいる!
うわっ!
なんで入ってくるのよ!
私は首まですっぽりお湯の中に入った。
「急に入ってきたら驚くじゃないっ!
それに、恥ずかしいから出てよ。」
するとシャルルはふわっと笑顔で言ったのよ。
「いやだね」
はっ?
いやだって聞こえたけど…。
私がポカーンとしていると手のひらに収まったボトルから液体を数滴、バスの中へ落とした。
途端にさっきの爽やかな香りがひろがっていく。
「ジョーマ○ーンの日本モデル。グレープフルーツの香りはどうだい?
マリナが気に入るかと思って用意したんだけど、どう?」
わざわざバスオイルを用意してくれてたのね。それで入ってきたんだわ。
ここまで準備してくれてたなんて胸が詰まる思いだった。私のことを想って選んでくれたのが嬉しかった。
「とっても爽やかで良い香りね。私、気に入ったわ。それにお肌もツルツル!」
「それは良かった。マリナが気に入ってくれたならもっと取り寄せようか?
なんなら会社ごと買収してもいいけど。アルディはコスメ関係も最近では扱っているしね。」
「そこまではいいわよ。
こうやって楽しめるだけで十分だわ」
買収って…冷や汗ものだわ。
今のシャルルは何を言っても買ってくれそうだわ。でもケーキが食べたいって言ったらケーキ屋さんを買ってくれるかもしれない!と思っておねだりしてみたら
「永遠と食べ続けそうだからダメだ」
とあっさり断られてしまった。
何でも良いわけじゃないのね…。
それにしても、いつまでこうしているのかしら?そろそろ熱いし上がりたいけどシャルルがいると出られない…と考えているうちに頭がボーッとしてきて眩暈が…。
「マリナ、おいっ…嘘だろ。」
焦ってるシャルルの声が遠くで聞こえていた。
目を覚ますとシャルルが心配そうに覗き込んできた。私はバスルームで逆上せてシャルルを驚かせたみたい。
それほど長湯でもなかったけど首まですっぽり浸かっていたから熱がこもってしまったみたい。
「これからはオレが一緒に入る。
マリナを1人にさせると心配で仕方ないからね。」
あんたが入って来たから逆上せたんじゃないっっ!
私の必死の訴えが通じたのか免れる事ができたわ。毎回シャルルと入るなんて恥ずかし過ぎて考えられないわ!
ミネラルウォーターもいっぱい飲んで水分補給もしたし眩暈もなくなっていたからベットから出ることを許してもらえた。こういう時にお医者さんのシャルルはちょっと面倒なのよ。
点滴するとか言い出す始末!
「眩暈とか吐き気は普段もある?
頻繁なら逆上せと言うより貧血から来るのかもしれないな。
あとは疲労感とか眠気は?ないなら貧血の可能性が高いな。あとで検査しよう」
うわっ…完全にお医者さんモード。
下手に具合悪くしたら全身検査されそうで怖い。
そんな事を考えていたら昨日渡された愛の証…いわゆる婚姻の際に必要になるシャルルの書類一式をもう一度私に渡しながら、
「これは大切に保管してくれよ。
なんせオレの個人情報が満載だからね。
外に漏れたら悪用されかねない。
オレに出来ることの全てを捧げる。
何もかも…君に。オレの何もかもを…」
シャルルの腕の中に包まれて私はシャルルの愛を全身で感じていた。
苦しいほど愛し合うことを教えてくれた愛しい人…シャルル・ドゥ・アルディ。
私は愛の証を胸に抱きしめながら祈る…
これから先も同じ愛の重さでいられる事が出来ますように。
シャルルだけが私を愛しすぎるのではなく、私だけがシャルルを愛しすぎることもなく、同じだけ愛を与え合いたい。
「そうしよう!シャルルっ…! ねっ!」
fin
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みなさま、こんばんは!
最後まで読んで頂いてありがとうございましたm(__)m
約1ヶ月の長い間、更新を続けてきた創作が終わってしまう寂しさと達成感とで複雑な気持ちです。
シャルルだけが愛を、マリナちゃんはほとんど同情、可哀想、放っておけないと言う思いでいたオリジナル時代。
初のパラドクス後の創作に挑戦しました。実はお友達のえりーちゃんにリクエストして頂いたんです
リクを貰うのは初めての私。
パラドクス後はどうかな?って言われてドキドキしたのを覚えてます。
誰もが涙したパラドクス…。
報われる事がなかったシャルルの愛…。
私はマリナちゃんにも同じだけシャルルを愛してもらいたい。真剣にシャルルの愛に向き合ってもらいたい。
絶望からのシャルルの逆転勝利(≧∇≦)
楽しんで頂けたら幸いです。
拙い文章、表現力の稚拙さなどは大目に見て下さい(^_^;)