ドキドキっ!!
私は人生最大のピンチ中なのよ!
ここはシャルルの居室。
アルディ家で治療を受けていた私はこのお屋敷で自由に生活していた。
だけどシャルルの居室、つまりプライベートルームに入ったのは初めてなの。
そりゃ記憶失くしててシャルルの事はすっかり忘れていたから医者と患者、そして友人って関係だもの当然よね。
それが今朝の騒ぎで記憶が戻り、シャルルに想いを伝える事がようやく出来たの。そこまでは良かったんだけど…。
優に5人は座れそうな大きなソファにシャルルと2人、私の腰にはガッチリとシャルルの腕が絡まり私にこれまでの事を尋問するシャルルの熱い瞳に心臓が破裂寸前だった!
「さて頭痛も治ったようだな。
マリナ、記憶に関する事、パリに来た経緯、ミシェルとの事など聞いておきたい事が幾つかあるんだ。まずはミシェルと昨夜何があった?」
私のウソなんてシャルルには通用するはずもなく、私の中のミシェルへの想いを見極める熱い視線が食い入るように私を見つめている。
私はシャルルが忘れられずにパリまで来たわ。だけど記憶がない時にミシェルに想いを寄せ始めていたのは事実よ。それが間違いから始まったものだとしてもね。きっとシャルルはその部分を私の口から聞きたいんだと思う。ミシェルへの想い…嫉妬なんて言葉ではなく、真実を
私に見せてくれとシャルルが求めてるのを感じた。
でも私は言いたくなかった。
シャルルを傷つけたくなかった。
あんなに嬉しそうに私の告白を祝っていたシャルルを見たらミシェルとの事を話す気にはなれなかった。
「ミシェルにおやすみのキスを軽くされただけよ。」
出来るだけさらっと言って私はシャルルを見た。
シャルルは私の目をジッと見つめて観察しているみたいだった。
「マリナ、隠されると余計に何かがあるみたいだよ。正直に言えよっ!」
さっきまでの幸せそうな笑顔は消え去り辛そうなシャルルがそこにいた。
真実を求めているように瞳の奥に影を残していた。
どんなに愛してると言葉にしても、あの小菅での出来事は消せない。
「行かない。私は、和矢が好きだから、和矢とやり直すの」
華麗の館で愛してると言ってシャルルを喜ばせておきながら、私はシャルルの手を放した過去がある。
それをシャルルは一生忘れない。
天才だからこそ忘れる事ができない。
だから私の言葉を見極めようとしているんだ。
「分かった。ちゃんと話すわ。」
私が話している間シャルルは黙って聞いていた。
ミシェルの優しさに触れて私は彼に惹かれ始めていた事。
ミシェルに懐かしさを感じていた事。
そしてミシェルにキスされて私がミシェルを愛してないと知ったこと。
「キスした事も惹かれた事もシャルルに知られたくなかったの。あんたを傷つけたくないと思いつつ、本当は私が傷つきたくなかったんだわ。あんたに嫌われたくなかったの。ごめんなさい…」
私は涙が溢れてきた。
自分の思いと向き合って真実がわかったの。私はシャルルに嫌われたくない。
愛されたい…それでミシェルとの事を誤魔化そうとしていたんだ。
つづく