朝からミシェルとジルの企みでハラハラドキドキさせられちゃったけど、結果的に私はすべての事を思い出すことができた。
ジルはずっと私に何も教えてはいけないってシャルルに口止めされていて辛かったみたい。ジルにもいっぱい心配をかけてしまったわ。
それにミシェルをシャルルだと勘違いしていた時のジルの事を考えると本当に申し訳ないと思った。だってあの時のジル怒っていたもの。シャルルが当主であると唯一の当主であるとひどく怒っていた。それだけシャルルの事を思っていたのよね。
私はジルに抱き付きながらあの時はごめんね。と謝った。
「いいえ、マリナさんは悪くないですわ。記憶が失われていたんですもの仕方がありません。でもこれからはシャルルの許可なしでは外も歩かせてもらえないかもしれませんね。」
くすっと笑ったジルは本当に綺麗なんだけど最後の一言は余計なんじゃない?
シャルルならやりかねないわ…。やめて、余計な事を吹き込まないで!
それからミシェルの前まで行くと私は俯いてしまった。
だって、何て言っていいか困ってしまったのよ。
正直に言えば、ミシェルは好きになりかけていたわ。あれだけ同じ時間を過ごしていたんだもの当然と言えば当然かもしれないわね。
でも裏切ってしまったような気持になって私は困ってしまった。
「ミシェル…」
そんな私の気持ちが伝わったのか、ミシェルは私の頭にポンと大きな手を乗せるとポンポンとなで髪をくしゃっとかきまぜながら
「オレはマリナが好きだよ。だから君の幸せを願っている。
これで終わりじゃない。シャルルに振られたらオレのところへおいで。
そしたら昨日の続きだ。オレの我慢もそこまでだよ。」
ミシェルの言葉が言い終わると同時にシャルルが私を腕の中に引き寄せながら
「誰にも渡さない。マリナは二度と放さない。ミシェル、諦めるんだな。
さて、まだ朝食も摂っていない。今日のところは引き上げてくれ。」
ミシェルとジルにそう言うと内線電話をとり、朝食の準備を頼んでいた。
「オレだ。居室に特別な朝食の準備を2人分。フルーツとシフォンケーキは多めに。」
シャルルの晴れ晴れとした声が響き渡ると私たちはシャルルの部屋へと向かった。
すでに数名のメイドさん達が慌ただしく朝食の準備を始めていて私とシャルルが部屋に着くと程なくして準備が完了した。
シャルルのわがままで居室での朝食に急きょ変更されてもアルディ家のメイドさん達は素早く対応するのねって感心してしまった。
普段の私の食事とは違う内容に少し戸惑った。
朝食よね?こんなに食べてもいいの?って言うほどテーブルいっぱいにお料理が並べられていたの。ホテルのビュッフェスタイルのような品数の多さよ!
「シャルル、あんたいつもこんなに豪華な朝食を食べているの?
ここでお世話になってからこんなのは初めて見たわ。
私の朝食は控えめにしていたのね!」
私はふくれっ面でそう言うと、シャルルがふわっと笑いながら
「今日は特別な日だからね!なんせマリナの告白が聞けたんだ。
それに2人のスタートの日でもある。
祝いの食事だからね。これくらいは当然さ。」
私は飽きれながらもシャルルの嬉しそうな顔を見ていて本当に幸せを噛みしめていた。
昨日までのモヤモヤした気持ちもなく、ただ愛する人のそばにいられる幸せ。
こんなにも満たされる瞬間が来るなんて考えもしなかった。
デザートのフルーツもたくさん頂いてシャルルの分のシフォンケーキもしっかりと頂いてお腹も心も大満足だった。
これからの時間をシャルルと一緒に過ごせる事に胸を躍らせていた。
それなのにシャルルは、朝食が済むとソファに座るように私に言うの。
それも真剣な顔になって。なんだろうと不思議に思っていたら…
「それで、昨夜ミシェルとはキスをしたって聞いたけど一体どういう事なのか聞かないといけないな。それにミシェルとロワールで何があったのかも…」
うわっ!覚えていたの?いや、シャルルが忘れるはずがないものね。
冷や汗をかきながら私はごまかそうとしているうちに腰を掴まれて身動きがとれなくなってしまったの。
挑戦的な瞳が私を映し出し、魅惑的な色気を放っていた。
容赦しないと言わんばかりの瞳に身の危険を感じた。これはとってもピンチ!
ここはシャルルの部屋で私たちは2人きり・・・。
私はこのピンチをどうやって切り抜けようかと考えた挙句に思いついたのが…
「頭が少し痛くなってきちゃった。部屋に帰って少し休むわ。」
シャルルは私を覗き込むと鋭い冷凍光線を向けながら一言。
「瞳孔、体温、発汗などから考えて頭痛は起こっていない。したがって君はウソを言っているということになるが、オレが心理学を学んだって事は忘れたままなのか?」
あっ!そうだった。シャルルにウソは通用しないんだわ。
だからさっきのミシェルの企みも見抜いてたってこと?
「さて、君が頭痛を訴えてまで自室に戻ろうとしたその訳を聞かせてもらおうか。
いや、時間ならいくらでもあるさ。まだミシェルが当主代理をしているからね。」
そのあと私は尋問、詰問のようなシャルルの嫉妬心を一身に浴びることとなったのよ!
つづく