きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の祈り(パラドクス後マリナ編)22

それぞれの思いが巡る…。
私はシャルルの悲しげな顔が忘れられなくて、胸にかすかな痛みを感じていた。
そしてミシェルはなぜか満足気に微笑みを浮かべているように見えた。

夕食をミシェルと一緒にしてその後、私はミシェルの私室にお邪魔したの。
シャルルの事も気になっていたけど、さっきの廊下での話ををもう少ししたかったの。

シャンパンでいい?」

そう言うとミシェルは部屋の奥に完備されているカウンターから手早くボトルとグラスを取るとリビングに戻ってきた。大きなソファに並んで座りグラスを合わせた。

「マリナ、さっきは悪かったな。オレが連れ出したのに君に嘘をつかせてしまった。」

ミシェルは気にしていたみたいだけど、あれ以上話が大きくならなくて正直、私はホッとしていた。
シャルルがあんな風に感情的に声を荒げるなんて、初めてみた。
突然の事で私は思わずミシェルを庇う形になってしまったの。
普段は冷静で何があっても動じそうもないシャルルの激情に触れて心が痛かった。シャルルはとても心配してくれてたのよね…。
だから余計にミシェルに憤りを覚えたんだわ。行き先も言わず反対を押し切って出掛けた事を私はひどく後悔していた。



「嘘は良くないけどあの時はそれしか思い浮かばなかったのよ。シャルルもかなり怒っていたし、凄く心配をかけてしまったよね。勝手に出掛けたのは良くなかったね。

ミシェルの大切な場所に行けたのは嬉しかったんだけど。」

優しく包み込むような瞳で私を見つめてミシェルがそっと私の隣に腰を下ろした。

「君は不思議な子だね。オレは今まで誰かを愛しいと思った事はママン以外にいなかった。そんな機会もなかったしね。
こうして君と過ごせて本当に楽しいよ。
オレは争いや憎しみの中でずっと生きて来たんだ。ずっと長くね…。でも違う生き方もあるのかもしれないと思えるようになったよ。誰かの為に何かしたいと思えるようになった。マリナ、オレは君を大切に思っている。」

ミシェルは私の肩に手を当てて顎を摘むと上向かせた。

「キスしてもいい?」

私は心臓が飛び出しそうなほど、緊張してしまい、ミシェルを見つめる事しか出来ないでいた。ミシェルの事は好きよ。
でも好きと愛してるは違うわ。それにシャルルの顔がなぜか浮かぶの。
それでもミシェルは頬を傾けて優しくキスをした。
私が体を固くすると、唇を離して

「マリナ、イヤかい?」

私は答えに困ってしまう。
私を大切だと言ってくれたミシェルを傷付けたくなかったの。ミシェルの事は好きなのかもしれないと思い始めていた。
でも何か違う気が…。
胸に小さな痛みが走る…。

私は自分の気持ちが分からないまま、ミシェルの想いに応える事はできない。


「無理やりなんてしないから。
マリナの嫌がる事はしたくない。
今夜はもう遅いし、オレはこれから出掛けるから奥の寝室を好きに使うといいよ。」

そう言うとミシェルは部屋を後にした。


ドキドキが収まらないまま私は部屋に1人残されて、酔いも手伝って朝まですっかり眠ってしまった。



翌朝、目を覚ましてミシェルの部屋に居ることを思い出した。
そうだった!
私はミシェルの部屋に泊まってしまったんだったわ。ミシェルは何処かへ出掛けてしまったし私は自分の部屋まで戻るのも面倒になっていたのよね。

だけど誰かに見られて誤解されるのもイヤだったから急いで身支度を済ませて部屋を出た。ところが扉を出た時、タイミングが悪かった…向こうから歩いて来たのはミシェル?シャルル?
見分けがつかないって困るわ!

「おはようマリナ。こんな所で何をしているんだい?」

このテノールはシャルルだわっ!
とっても気まずい。口調は穏やかだけどその表情は厳しく、不機嫌そのもの。

選りに選ってシャルルに会っちゃうなんて。再び部屋に入るのも変だし、ここは落ち着かないと。

私は出来るだけ普通にと思ったけど

「お、おはよう、シャ、シャルル…」

と声が上ずってしまった。ダメだわ…。余計変じゃない。

しばらく沈黙した後、シャルルが厳しい口調になる。

「マリナ、まさか泊まったのか!」

やっぱり誤解されてる…私は焦って何か言わなきゃって思ったんだけどミシェルは出掛けたから何もないのよって説明するのもおかしいわよね…。
私がドギマギしていると

「マリナ…。」

シャルルはその瞳に影を落としていた。
耐え難い苦痛に耐えるように…。
絶望の淵に立っているように見えた。

シャルルは私を食い入るようにただ見つめて、ただ苦しみに耐えて何かを抑え込むように立ち尽くしていた。

「シャルル、私。ミシェルとは…」


気付いたら涙が頬を伝っていた。
また胸がチクリと痛む…。


そこに執事さんが慌てた様子で駆け寄ってきてしまったから私は何も言うことができなかった。

「シャルル様、大変でございます。
すぐに当主執務室までお越し下さいませ。ミシェル様とジル様もすでにお揃いになってます。」

「何があったっ?!」

シャルルが訪ねたけど、執事さんは自分は詳しく聞かされておらず、事情はよく分からないが大変な事になっているのでシャルルを呼び寄せるようにミシェルに言われて来たらしい…。



一体何があったの…?







つづく