きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の祈り(パラドクス後マリナ編)4

「いつまで寝ているんだい?
さっさと起きないと腰が立たないようにするぞっ!」

ひぇーっっ!朝からムード出さないでちょうだい。

身支度を済ませて私達はホテルを後にした。帰りの車の中で薫が私に聞いてきた。

「それでおまえさんは和矢とそのマンションで暮らすのかい?」

和矢には悪いけど断ろうと思ってるって薫には話した。薫も賛成のようだった。

「マリナちゃん、人は間違いを起こすものだよ。その時はそれが1番良いと思えた事が後になって間違いだったと気づく事もある。
その時に何が出来るか?
これが重要なんだ。1番大切にしなきゃいけないのは自分の気持ちに素直になることだ。間違いを認めて謝る勇気だ。
ごまかして生きて行くには人生は長すぎる。あたしゃ兄貴の側にいることを決めた。それがどんなに大変な事でも周りにどう思われようとも。自分の気持ちに嘘はつけないからな。
おまえさんの心のざわめきの理由はこれじゃないのかい?」

そう言って薫は胸ポケットから封筒を差し出した。
その白い封筒を開くと中にはパリ行きの航空券が入っていた。

「これって…っっ!!」

私が驚いて薫を振り仰ぐと、優しい瞳が私を包みこんでいた。
私の胸の中まで見透かしたような…何にも臆することなく未来へ歩き出せと言っているようだった。


「それはいつでも使える。もちろん片道分しか用意してないが、それでパリに行けば心のざわめきの正体も分かるだろうよ。」








アパートに戻り薫に貰った航空券を眺めていた。
ずっと心に引っかかるそれの存在に気付き始めていた。
胸の奥にしまい込んでいたそれが徐々に私の中で成長し続けていて、もうその存在に気付かずにはいられなかった。

「シャルル…。」

そう、私はシャルルのその後が気掛かりだったのかもしれない。だけど和矢とする話題でもなかったし、和矢だってあれ以来シャルルとは連絡を取っていないはず。
「アデュウ!」そう言って私たちに別れを告げ、颯爽と一人で戦いの中へ向かっていったあの後ろ姿を忘れる事が出来なかったんだわ。

ルパート一行とパリのアルディ家へと向かう姿が焼き付いて離れない。無事に当主の座に復権できたのだろうか。そんな事を考えていた。


パリに行って自分の気持ちを確かめるにしても、その前に一つやらなければならない事があった。そう、和矢との事をハッキリさせなければいけないと。

数日後、会って話したい事があると和矢に電話を掛けた。
すると和矢から、この前の返事を聞かせてほしいと言われた。
私は一瞬、黙り込んだけど今の気持ちを話した。

和矢は大好きたけど一緒には暮らせない事。それからシャルルの事が心配な事。

電話の向こうで息を飲んだのがわかった。しばらくの沈黙の後に和矢が話し出した。


「答えを焦ってオレはマリナを困らせちまったかな。
あいつと小菅で別れてからしばらくしてお前の気持ちが俺にはないって気が付いてたんだ。逃亡生活の中でシャルルと新たな絆を築いたのはすぐに分かったよ。でもオレは知らないフリをした。
オレ達が再会した時にマリナは懐かしさをオレへの愛だと勘違いしたんだ。
でも認めたくなくて、このまま二人でいればまた前のように愛しあえるかもとしれないと賭けていたんだ。いつかあいつの事もマリナの中で思い出に変わるかもしれないってね。でも一度芽生えた気持ちは止める事が出来ない。そして一度変わった気持ちは二度と元に戻ることはないと分かった。もう会って話す必要はないよ…マリナ。お前を苦しめたくない。それに…会っちまったらオレはおまえを手放せなくなる。マリナ、お前の幸せを願っているよ。俺たちはこれで終わりにしよう。」

そう言うと和矢は電話を切った。
私は涙が止まらなかった。和矢、本当に大好きだった。でも心の中でモヤモヤしたものが何か…今なら分かる。












つづく