きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛はそこにある…je crois 30

私が入り口で立ち止まっていると、あとから来たガイが怪訝そうな顔をした。

「マリナどうしたの?いいから中へ入って。そこに座って少し待ってて。」

ソファに座るように言うとガイは奥の部屋へと消えて行った。
私は戸惑いながらも広いリビングに1人残されて落ち着かない。

なかなか姿を見せないガイが気になってやっぱり奥の部屋に行ってみようかと思い始めた時にやっと姿を見せた。両手には深紫色の物を持っている。

ガイは私の向かい側に座るとそれをテーブルの上にそっと置いた。
深紫色の布には金の刺繍が施されてあった。

「ガイ、何これ?あんたが私に見せたい物ってこれの事?」

ガイは春風のような優しい笑顔を見せると小さく頷いた。

「オレはパリへ向かう機内でシャルルから縁談の話がある事を聞いた。
それで日本にいる時にマリナが泣いていた理由も喧嘩をしたと嘘を言っていた理由も理解できた。」

そう言いながら深紫色の布を解くと中から楽器ケースのような黒い箱を取り出した。前に見た事のある薫のバイオリンケースより少し大きかった。
ガイはサイドの留め具を静かに外した。
上部に手を掛けてゆっくりケースを開けると中には輝くような装飾が施された杖が横たわっていた。


「ガイっっ! これってまさかっ…!」

その杖から視線を引き剥がすと私は答えを求めるようにガイを見た。

あるはずのない物が自分の目の前に現れ、見事な輝きを解き放っている。
初めて目にしたそれがアルディ家の家宝クレアシオン=レガリアなのは私でも分かった。
全身の血が暴れ出すように駆け巡った。
私とシャルルとを引き離す原因ともなった家宝…。

それが今、私の目の前にある。

「ガイがどうしてこれを持っているのっっ…?!これはアルディ家の…」

信じられない。
それ以上、言葉が出なかった…。


「日本を離れてすぐに薫から連絡がきたんだ。あんなマリナを見てられないって。薫から、マリナがシャルルの為に身を引いたって事を聞いてオレはモンドフォール家についてすぐに調べたんた。」


私は息を飲む…。
まさにそんな感じだった。
ガイの口から語られる言葉は私への愛と優しさに溢れていた。

「パリでマリナと再会した時、オレは君に失望していた。和矢が好きだと言ってたはずの君がシャルルの元に居ることが信じられなかったんだ。
君の心変わりが許せなかった。
だけど日本に来てマリナの涙を目にしたら、やっぱり放っておけないって思ったんだ。
君が誰を好きになるか、どこにいるかなんて関係なしに君を悲しみから守りたいって結局、オレは考えていたんだ。
昔、薫に言われただろ?

『おまえ、マリナのために何ができる?
抱いてキスするくらい、普通の男だってするぜ。』

ってさ。あの時の言葉を思い出したんだ。まだオレに出来る事があるんじゃないかってね。
調べてみたらモンドフォール氏は父の古くからの友人だったんだ。それで頼み込んで売買交渉を早急に成立させてもらったんだ。
他にも交渉相手は居たらしいんだけど、誰とも分からない奴に渡すわけにはいかないからね。その場で買い取ったんだ。」


ガイは煌めく瞳を輝かせて私にウインクして見せた。
私はガイの深い愛を感じて涙を止める事が出来なかった。今でもこんなにも想っていてくれていたなんて知らなかった。
今でも大切に思っているとは言われたけど、ここまで想っていてくれていたなんて…。

「マリナ、泣くなよ。
オレが君のために出来ることは…。
これぐらいだけど…。」

一旦そこで言葉を切り、私に近づくと涙を伝う頬に手をあてて優しく拭ってくれた。

「これを持ってパリへ行くといいよ。
シャルルにはオレに貰ったってちゃんと言うんだよ。
そうすれば君の友人としてパリに行った時はアルディ家に寄りやすいだろ?
この前は取り次いでもらうまで相当待たされたからね。
マリナに渡すまでに盗まれたりでもしたらと思ってわざわざスイートにして鍵も厳重にしていたけど、気が気じゃなかったよ。」

笑いながらガイが私の顔を覗き込み、頭を撫でた。
私は何度も何度も頷いた。

「ありがとう、ガイ。
私は何もしてあげてないのに…。
あんたの気持ちに応えることも出来ないのに…。
こんなにしてもらって本当にどうやってお礼をしたらいいのか分からないほどよ。」

私は震える声で感謝の言葉をガイに送った。当主であり続けるために必要な家宝をシャルルに渡すことが出来るのが嬉しかった。

「1つだけ頼みがあるんだ。
オレのこの想いも願いも、もうこれで終わりにするよ。もうこれでいい思い出にするよ。だから最後に…。」

そう言ってガイは頬を傾け唇を重ねた。
それは始まる事のないまま終わってしまう切ない想いだった。
私はそれを受け止めた。
触れるだけのキス。

愛はそこにある…。
確かに私への愛があった…。






つづく

******************

みなさま、こんにちは☆
最後まで読んでくれてありがとうございました(^o^)

鍵をガチャッ…厳重な戸締りでした
期待はずれ…?(≧∇≦)

明日は成人式ですね。
明日の我が家はとっても早起きになります(>_<) やだ…5時半に着付けと聞き、娘と2人、固まりました(°_°)