きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の祈り(パラドクス後マリナ編)1

「オレたち一緒に暮らさないか?」

横浜の大学に通う和矢は休みごとに私のアパートまでバイクを走らせて来てくれていたの。
そんなある日、和矢がこう切り出した。


小菅でシャルルと別れてから私と和矢は再び愛を始めていた。
私はあのボロアパートで変わらずマンガを描きながら過ごしていた。
生活は未だに苦しくて電車代も出せなくて和矢が来てくれないと会うこともなかなか出来なかった。

私は返事を濁したままでいたの。
一緒に暮らす事には抵抗があったのよ。
好きだから会いたい。そばにいたい。
きっと誰もが思う事だよね。

もちろん和矢と恋をしていたい。
映画やランチ、それから公園を散歩なんかもいいわね。寂しい時は電話したり、それで十分だと考えていたの。
私はまるで中学生みたいな恋愛でドキドキしていた。
でも和矢は違っていたみたい。
いつまでも子供の付き合いではなく、結婚も視野に入れて考えてくれてるようだった。それが余計に私を追い込んでいたのかもいれない。

まだ結婚なんて考えられなかったし、私には夢があった。もちろん一流マンガ家になるって夢がね。


大好きな和矢…。
恋しくて恋しくて堪らなく好きだった。
想いを打ち明けられずに胸に秘め、泣いた日々もあった。シャルルとの逃亡生活に入る前に苦しみの中で別れを選んだ事、数々の苦難を乗り越え何度もすれ違いやっと私たちはお互いの気持ちを解き放つことができたの。


だけど、何かが私の胸の中で騒ついているの。1人になると暗闇に飲み込まれて行くような不安が私を取り巻き、落ち着かなくさせる。

いつまでも返事をしない私に和矢はしびれをきらしているのも分かっていた。
もし断ったら私達はどうなるんだろうか…。
和矢なら「じゃ、またいつかな。」と言ってくれるかもしれない。
私の事をいつだって優先してくれる優しい人だもの。ちゃんと話せば解ってくれるわよね。


週末になり、いつものように和矢がアパートを訪ねて来た。
ドアを開けて部屋の中へと促したが和矢は首を振ると真剣な眼差しで私を見た。

「いや、今日はお邪魔しないでおくよ。ちょっと出ないか?見せたい物があるんだ。」

私はよく分からないまま和矢の後に付いて行き、バイクへと跨がった。和矢が見せたいって言うなら着いて行くしかないわよね。



一体何だろう…。






つづく