きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

聞かせてほしい2

私は部屋で観光地取材プランを考えようとメイドに頼んでガイドブックを用意してもらった。
リビングの床にペタっと座ってスケッチブックを広げるとお手製の地図を作り始めた。
アルディ家があるのは16区なの。
パリの街は20区画で出来ていて取材に行くとすれば、まずは8区にあるシャンゼリゼ通り、エッフェル塔が7区だったかしら?
モンマントルの丘は18区なのね。
私は行きたい場所を書き出した地図を持ってシリルのゲストルームに向かった。

普段からシリルは別邸で仕事をしているけど今日は重要な案件にシャルルの決裁を仰ぎに本邸に足を運んでいて、タイミング良くあの場に来たわけ。

「マリナさん、初めましてだね。
オレはシリル・ドゥ・アルディ。
今、シャルルの決裁が降りてボクの仕事も一段落したから取材旅行、明日から行こうか?」

シリルはにっこり笑いながら私の前まで来ると右手をすっと差し出す。
シャルルの眉がピクッと動いた事に誰も気付いてなかった。
私も慌てて右手を出そうとした時にシャルルが間に入ってきた。

「シリル、マリナに触るな」

そうだった…。シャルルは握手も嫌がるのよね。ハグなんてしたらもう機嫌が治るまで大変だったのを忘れていたわ。
弟にまで嫉妬しなくてもいいじゃないって言おうとしたけどそんな雰囲気じゃない。むしろ取材自体が無くなるかもしれないわ。ここは黙って聞いておくのが一番ね。

「それから外泊は認めない。日帰りで充分。イヤならこの話は終わりだ」

イヤじゃないわ!全く!
口を開きかけた途端、シリルがニヤッと笑うとシャルルの方を向いて

「さすがにオレだって姉になる人に手は出さないよ。それにシャルルが好きだからね」

私だって恥ずかしくてなかなか口に出せない台詞をサラリとこの青年は言ってのけた。シャルルが好きだから…。
年下とは思えない程にシャルルと対等に話している青年を頼もしいと思った。
彼が一緒なら観光取材もきっと大成功だわ。

シャルルは参ったといった感じだった。シリルの素直さが眩しいみたいね。
昇り始めたばかりの朝陽を見つめるような眼差しがそこにあった。






シリルは翌日から2日ほど本邸のゲストルームに滞在することなった。
シリルの部屋を訪ねて自分の書いた地図を見せるとプレイルームで考えようと提案してくれた。
きっとシャルルに気を使っているのね。
二人きりで部屋にいるのは気が引けた様子だった。

「マリナさん、まずはシャンゼリゼ通りを見て回ろうよ。それからセーヌ河クルーズにしよう。有名スポットを目の当たりに出来るよ」

ほとんどシリルが考えてくれたの。地元の人に聞くのが1番よね。


私が部屋へ戻るとシャルルはソファに座りすでにワインを一本開け、さらに目の前のボトルもわずかしか残っていない。
普段はそれほど飲まないのに、きっと私を心配しているんだわ。

「君とシリルが楽しそうにしているのを見ると、やはり妬けるな。
オレはそれほど心が広くないんでね。」

私はソファに座り、シャルルの手を握って青灰色の瞳を見つめた。
ワインをこんなに飲むぐらい本当は不安な気持ちを我慢しているのよね。

「シャルル、何も心配する事はないわ。
私はいつもあんたしか見てないもの。
シリルとは良い姉弟になれそ…」

最後まで言う前に唇を塞がれてしまった。長いキスにシャルルの不安や寂しさが伝わってくるようだった。
その夜、私はワインの香りに包まれて明け方になってやっと眠れた。