きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

聞かせてほしい7

「どうしたの…?! 」

突然現れたのはシリルだった。

勝手に入ってきたら驚くじゃないっ!
文句を言ってやろうと近づいて、シャツの襟元からチラッと真っ白な包帯が見えてハッとした。

私は逃げるようにパリから離れたけどシリルには何のお別れもしないで帰国したのを思い出した。
私を庇って撃たれてしまったシリルに顔向け出来ない事を今になって思い出した


「シリル…ケガの具合はどう?
私、あんたに何も言わないで日本に帰ってきてしまったわ。感謝の言葉も言わないで私って酷いわよね。」

薄紫の瞳を切なく揺らして私をじっと見つめていた。私を責める事もなく、確かめるように私の姿を映していた。

「手術が終わって目が覚めたらマリナさんは日本に帰ったと聞かされて驚いたよ。シャルルは何も話さないけど、辛そうだった…何があったのか教えて欲しい。」

私は簡単な事よ…と言って作り笑をしてみせる。

「シャルルと居る事が窮屈になったのよ。この前みたいに命を狙われたり。
私は普通の生活に戻りたかった。
シャルルに私を自由にして欲しいと言って別れたの。それだけよ…。」

私にしては上手く言えた。相手がシリルだったから涙も出てこなくてホッとした。私が言い終わるまで聞くと、それなら…と口を開く。

「それならマリナさんは姉になる人ではなくなったわけだね。
オレ、あの時マリナさんを守らなきゃって必死だった。あんなに誰かを守りたいと思ったのは初めてだった。マリナさんの為なら死んでも構わないって思えた。

オレ、きっとマリナさんが好きなんだ。
シャルルと別れたなら、自分の気持ちと向き合おうと思って確かめに日本に来たんだ」

私はシリルの告白に反応することが出来ず、立ち尽くしていた。

「外に車を待たせてるから食事に行かない?マリナさん食べるのが好きだったよね!」

途端に私のお腹はグゥー。
シリルはクスッと笑うと私の手を取り外へと連れ出すと車は2人を乗せて走り出した。

都内を慣れた様子で車は進み、日本でも一流と言われるホテルの玄関口で停まった。運転手さんがドアを開けてくれて私は降り立った。でも私は普段着よっ!

格好つけて連れて来たのに、可哀想そうだなって思ったけど教えてあげたわ。

「シリル、こういう場所は普段着じゃ入れてもらえないのよ。」

薄紫の瞳を挑戦的な光が走り、私は自分の甘さを後悔することになった。

「マリナさん、オレを誰だと思ってるんだい?シリル・ドゥ・アルディがそんな事も知らないと思ったのかい?
君じゃあるまいし。部屋にワンピースを用意してあるから行こう。」

屈託のない笑顔を振りまいてチェックを済ませる姿にホテルの従業員も見惚れて仕事を忘れるほど輝いていた。
恐るべしアルディ一族。美しいって、ある意味罪よね…。

エレベーターに乗り込み最上階へ着く。ロイヤルスウィート…。これは、マズくない?
いや、待てよ。私は単に着替えに来たのよね。って事は着替えの為にこの部屋をキープしたの?!

金持ちの考えてる事は分からないわ。私ならトイレでも着替えられるわよ!

そんな事を考えながらシリルの後に付いて部屋へと入る。さすがスウィート。家具もロココ調に揃えられていて豪華だわ。シャルルの好きそうな部屋だなぁ…ふとそんな事を考えて胸が熱くなる。


冷蔵庫からミネラルウォーターを出してきてグラスに開けると私にも差し出す。

「アルコールの方が良かったかな?
フランスでは16歳以上は飲酒できるけど、日本ではオレはまだ飲めないんだよね。」

奥の部屋に着替えがあるから好きなのを着てと言われて行ってみるとクローゼットに10着ほど用意されていてビックリ。
シリルは分家になるんだけど、それでもこの待遇…アルディ家の財力に驚くわ。

スグリーンの落ち着いたワンピースに着替えるとシリルに声を掛けた。

「どうかな?」

私は気恥ずかしくて俯いて聞いてみた。
ソファから立ち上がるとシリルは私を眩しそうに見つめながら、よく似合っていて、とても素敵だよと褒めてくれた。

じゃあレストランに行きましょう!って
私が部屋を出ようとした時に腕を引かれ、シリルの胸に抱き締められた。







「好きだ…。」





つづく