きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

聞かせてほしい

「そんな訳だからさ。フランスの観光地をいくつか取材して日本に送ってよ。
場所は任せるからさ。
パリにいるんだから大体分かるでしょ。それから報酬は出来高性だからね」

一方的に言って電話は切れた。
外線が掛かってきて何かと思えばこの松井さんからの電話だったのよ!










私はシャルルと一緒にパリで暮らすって決めた時、編集部にはささやかな連載さえもすっかり打ち切られていた。
担当の松井さんにだけは一応パリに行く話をして日本を後にしてきたの。
もしかしたらパリでもまた仕事が回ってくるかもしれないと思って。

神華 静。彼女は一年程前にデビューして、そこから毎月アンケート1位を独占し、新人賞を総ナメにした人気まんが家。
彼女の新連載のテーマがフランスを舞台にした恋愛物に決まり、いよいよ連載もスタートという時に事故でケガをしたらしい。
編集部では取材に行けない彼女の代打を探していたところ、私を思い出して電話してきたってわけ。

この話が来た時、行った事がない観光地もまだあったし、取材って言えば好きに出掛けられる上にシャルルも文句も言わないだろうと思っていたの。

「断るんだな…」
私の予想は見事に外れてシャルルの冷やかな冷凍光線だけが私を射抜いていた。

「理由は二つ。まず、働く必要がない。
二つ目はフランス語も分からないマリナを行かせられるほどオレの神経は太くない」

「1人では出掛けないわ。無理はしないし、今回は簡単な取材なのよ。観光地にも行ってみたいの」

シャルルは腕を組んだまま考え事をしているのか何も答えない。

私が痺れを切らして口を開きかけた時、
背後からテナーが響いた。

「オレが一緒に回ってあげるよ。
それならシャルルもいいでしょう?」

振り返るとショートの金髪をキラキラさせた青年がこちらを見ている。
薄紫の瞳を視界に捉えるとシャルルは皮肉げに笑うと信じられない事を言った。

「シリル。久々の対面に盗み聞きとはアルディ家の人間、いやオレの弟とは思えない行動だな。」

「たまたま聞こえただけだよ。
それにオレと一緒なら安心じゃない?
彼女を屋敷に閉じ込めてばかりもよくないと思うけどね」

シャルルは仕方がないと言った感じで彼に近づくとその肩を抱き、背中をトントンと叩いて再会を喜んだ。二人の重なり合う美しさと言ったら言葉に出来ないわ。まるで天使と女神ね。男同士ってところがなんとも惜しいわ。

彼はシャルルのお父さんと別の女性の間に生まれた異母兄弟なんだって。
シリルはシャルルやミシェルと同等レベルの知能の持ち主でIQはなんと250。
揃いも揃って高い知能の兄弟よね。
お父さんが亡くなった後はアルディの仕事をしている。
彼も飛び級で18歳の今ではすでに大学は卒業していた。

驚いたことにそんなシリルのおかげで私は取材に行く許可が出たの。

どんな事でも願えば叶うものなのね。