きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

聞かせてほしい19

翌日、退院の手続きを済ませると私はアパートまで送ってもらって…と思っていたのが、そうじゃなかった。

病院を出ると車はそのまま羽田空港まで走り、私はシャルルに手を握られたまま出国の手続きが終わるまで離してもらえなかったのよ!

パスポートはジルがアパートから持ち出したらしく、しっかりと準備されていたし、荷物は後でパリに送るようにしてあるとあっさりとシャルルに言われてしまった。
あの…私はパリに行くなんて一言も聞いてないわよ。

でもね、文句が言えないと言うか切り出せないままプライベートジェットは離陸したの。
嘘をついて強引にシャルルと別れた事や治療してもらった事、私を庇ってくれた事を考えると何も言えなくて。
シャルルは私の隣に座りじっと目を瞑ったままジェットに揺られていた。

でも私は思い切ってシャルルに聞いてみたの。

「シャルル、パリには私も行くみたいだけど、いつ日本に帰れるかしら?」

するとシャルルの悲しみが機内中に広がりジルもシリルも静かに立ち上がりそっと私達から離れて行く。


「このまま帰すつもりはないが…。
君はパリにいたくない?」

私は返事に困ってしまう。
私の嘘がバレてしまった今、なんと言えばいいのだろう。
でもシャルルに迷惑を掛けたくないって言うのは変わらない。
だから一緒には居られない…。
それをシャルルに言っても納得しないわよね。私自身も実際、揺れていた。
シャルルと離れている間の寂しさと喪失感は想像以上だった。
この私の食欲がなくなるぐらいだもの。

私が俯いたまま黙っていたら、

「クルーザーで君たちを庇ったSPの事だが…。」

そう、彼の事も責任を感じていたの。
元には戻らない…彼の人生をきっと大きく変えてしまった。
シャルルと共に生きていくと言うことは、これからも同じ様な事があるかもしれない。
今度は違う人の人生を変えてしまうかもしれないと思うと怖かった。

私は逃げたかったの。
そんな事から、シャルルから逃げたかったの。

何も話さない私にシャルルは優しく語り始めた。

「あの日シリルはSPを連れていなかったんだ。彼はプライベートであの場に遭遇した。当然、装備は全くなかった。
通常、SPの任務の際は防弾ジャケットを着用する。彼らだって無防備に体を張るわけではない。
マリナ、君は感謝することはあっても責任を感じる事はないよ。
彼自身が判断し行動した。彼はシリルの幼少期からの専属なんだ。それで装備がないにもかかわらず命がけで夢中で君たちを援護した。

マリナが日本へ帰った後、オレは彼の様子を見に行ったんだ。
容体も安定し、損傷した臓器は一部は失ったが機能回復の余地があったので再度オペをした。執刀医はオレだ。

オレは君に聞かれた時、彼はすぐには戻らないとは言ったが元に戻らないとは言ってない。
君は勘違いしているよ。
彼は順調に回復している。神経を損傷したわけではないから彼が復帰を望むのなら叶わないことではない。

そもそも今回の事件は…」


これまでに判明したことをシャルルは話してくれた。

親族会議でも話題に上がる私の出身。
でもシャルルの意志は固く、長老達も容認と言った雰囲気になっているそうなの。
そして親族会議メンバーの中にフォルジュ家もいるけれど親族の中で更に本家と確固たる繋がりを持とうとしたらしい。

そこで、年頃も同じ令嬢をシャルルと結婚させてフォルジュ家の力を強大にしようと企てた。シャルルの婚約者の私が邪魔になり、襲撃した。

事件解明も当然だけど、私を狙った者を見つけ出すまで当主の職務には手をつけないシャルルに焦ったアルディ家では総力を上げると共に軍も動かしたって後からジルに聞いた時はあまりに話が大きくなっていることに驚いたわ。

こうしてパリに着くまでに、これまでの事件の事やこれからの事をあれこれと考えているうちに私は眠気に誘われるがままに眠ってしまった。

考える気はあったんだけど、どうしても頭を使うと眠くなっちゃうのよね。
あはは…。

目を覚ましたのはパリに到着してアルディ家に向かう車の中だった。
温かい胸に抱かれてシャルルの香りに包まれて私はすっかり安心しきっていたのね。

「お目覚めだね、マリナちゃん。
もうすぐ屋敷に着くよ。具合が悪いとかないかい?」

そう言って覗き込むシャルルがアップで私は何だか久しぶりすぎて、すっごく照れてしまった。
シャルルに対しての免疫が薄れていた私には刺激が強すぎるわ。
車の中で胸に抱かれて眠るって恥ずかしくなってきて私はシャルルの膝から降りようとしたの。そしたら腕にグッと力が入って私は降ろしてもらえなかった。


「もう二度と放さない…」


シャルルは耳元で囁いた。

お屋敷に入ると私はシャルルの居室へと連れて行かれた。
もちろん降ろしてもらえるわけもなく、抱っこされたまま私はアルディ家へと舞い戻ってきたのよっ!


「さて、マリナちゃん、今回の事をオレが分かるように、きちんと話してもらうよ。お望みなら、もちろん朝まで聞いてあげるよ。」

端正な顔立ちを近づけないで欲しいわ。甘いムードも出さないで。

久しぶりのシャルルに溺れてしまうじゃないっっ!








******************
最後までお読み下さってありがとうございました


次回【聞かせてほしい20】はR表現を含むためファン限定公開とさせていただきます。
お手数ですがゲストブックにてお気に入り登録に一言、お知らせ頂けたらと思います。


ご意見・ご感想など書いて下さると大変励みになります(*^_^*)
ぜひぜひシャルルトークしましょう。