きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の祈り(パラドクス後マリナ編)15

夕食も終わってふかふかのソファに体を投げ出して頭の後ろで腕を組み敷いて天井を見上げる。

私はさっきのミシェルとの事を思い出していた。ミシェルの意外と逞しい腕に囲まれて戸惑った。
急にあんな風にされたら誰だってドキドキするはずよ。これはミシェルを好きになったって事じゃないわよね。


ただ、震えていた心が温められた気持ちになって、あの時は何だかとても安心できただけよ。


それにミシェルって当主って言ってたけどお兄さんって事よね…。シャルルが弟って事になるよね。大抵は長男が家を継ぐしね。

そんな事を考えていて思ったのが私はミシェルと過ごしていた事があるんじゃないかなってこと。なんだかそんな気がするのよね…。




私が忘れているのってミシェルの事なの?



ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

中庭での事をジルに見られたのは誤算だったな…。シャルルの耳にはすでに入っているのか…。

執務室の扉がノックされた。

以前当主争いの際シャルルを追い落とし、使用していた部屋だった。
苦々しい思い出である。そして再びあの時と同じ席に着いている自分が不思議だった。アルディ家当主の席…。
あれ程までに執着したはずだが今となってはまるで興味はなかった。
オレはシャルルという光に影を落としてやりたかった。だがシャルルもまた影であることを知った。
当主になりたかったわけではない。
ただ、自分が影となった相手がどれほどの奴なのか見極めたかったのかもしれない。


「入れ。」


長い金髪を揺らしながらジルが部屋へと入ってきた。
青に近い灰色の瞳には怒りがこもっていた。

「ミシェル、どういうつもりですか?
マリナさんはシャルルが唯一愛した女性ですよ。
それを知っていて、なぜっ?
彼女に記憶がない今、接触するなど卑怯ですわ。」

オレはマリナが好きなわけではない。アイツとは違う。
記憶障害を患う人間に興味を持ったにすぎない。
ただ、マリナが闇に閉じ込められてるようだと言い、光を求め、光の中の住人になりたいと話をしている姿がとても愛おしくなった。

かつての自分と重ねていたのだろう。
オレも闇の住人であった。生まれながらにして存在を隠された。
オレもアルディの人間であるのに居ない者として扱われ闇に閉じ込められ育った。
光を一身に浴びアルディの後継者として大切にされているシャルルを憎んだ事もあった。
そんな過去の自分とリンクさせ、興味を持ったのは確かだった。

「彼女に興味を持ったからだ。だが接触してきたのは彼女の方だ。
あの時も彼女は何か怯えていた。だから支えてやった。それだけだ。
ジル、君が口を出す事ではない。マリナが決めることだ。」



自分が分からない不安…。
光の住人になりたいと願う彼女。
幼いころの自分のようだった。
愛おしく、救ってやりたいと思う気持ち。
かつてのマリナへの印象は変わっていた。
彼女の助けになってやりたい…。彼女の笑顔が見たい。
オレの物にしてしまいたい…。









つづく