きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

心をこめて7

別邸に一人で行くのにも慣れてきた私はすっかりお散歩気分だった。
別邸に着くと控え室に向かいクローゼットの前で毎回悩んでしまう…。

今日はどのメイド服にしよう。

私は薄ピンクのメイド服に着替えて鏡の前でくるっと回ってみた。
とっても可愛らしい。ただ、私の顔がメイド服に負けてしまっているのが悲しい。
うぅぅ……。

着替え終えた時に誰かが扉をノックする。扉を開けるとカーラさんが女の人と一緒に立っていた。

「少し前に働き始めたアニーも今日からマリナ様と一緒に働きます。どうぞよろしくお願いします。」

アニーは一礼すると微笑んだ。
彼女がここへ来て挨拶するって事は私がシャルルの婚約者って知ってるみたいね。ジルったら隠す気あるのかしら??
私があれこれ考えているとカーラさんは「では失礼します。」と言って戻って行った。

とにかく仕事をしなきゃね。
アニーと一緒に庭へ出て花選びを始めた。三日間で詰め込まれたとは言っても実際には名前も特徴なんてのもよく分からないのよね…。
とりあえず選んだ花たちを庭師のピーターに頼んで屋敷に運んでもらっていよいよ飾りはじめる。

まずは基準となる花を決めて、そこから私の感覚で生けていったわ。
正面玄関に一つと各フロアに二つずつ、三階までだから全部で七つ。
フロア毎にテーマを決めて飾らないとバランスが悪くなるって教わったけど難しいのよね。こんなに花を飾るって大変だったのね。


花の飾りを三ヶ所終わらせた所でミシェルのお茶の準備のために厨房へ向かった。
料理人みたいな人が数名とメイドが数名お昼の準備をしている最中みたいだった。
でもね、アニーもだけどメイドの人たちの服は黒なのよね。今日はたまたま黒を選んだ人が多かったのかしらね?
私も黒にすればよかったかな。
でも黒ってあったっけ??


私は厨房にある紅茶の棚から茶葉を選んで紅茶のセットと一緒にワゴンに乗せるとミシェルの執務室へと急いで向かった。

ミシェルって時間に遅れたりしたら怒りそうよね。

「悪くないよ。
インド北部産のシッキムだね。
希少価値の高い紅茶で渋みが少なくコクのあるまろやかなテイスト、爽やかな後味が特徴。これはストレートが一番だね。」

勉強した私だってここまで覚えていないのに、ミシェルはサラッと言い当ててしまった。しかも飲んだだけで分かるってすごいわ。

「あんたもやっぱり天才なのね…。」

私が冷や汗をかいているとミシェルは
「君も一緒に飲まないか?クッキーもあるよ。」
と誘ってくれたので、有難くご馳走になろうとしてハッとした。
私はメイドだったわ…。しかもまだ花の飾りも終わってない!

「まだ仕事もあるから遠慮しておくわ。クッキーは持って帰るから残しておいてちょうだい。」
私が言うとミシェルはチラッと視線をアニーに向ける。

「もうメイドの仕事はしなくてもいいよ。明日からオレのところへ来てお茶をしながら話をしていればいいさ。」

突然ミシェルが言い出して私は訳が分からず、戸惑っているとクスッと笑って

「冗談だよ。午後のお茶も楽しみにしているよ。」
それだけ言うとミシェルは執務机に戻り無表情になってしまった。

何だったのかしら。
お茶はもういいみたいなのでアニーと片付けを済ませて部屋をあとにした。

私とアニーはランチを取ると残りの四つの花の飾りも終わらせた。その後アニーと別れて私はジョエルさんの代わりにアルディ家の歴史を教えてくれる先生パトリスさんと勉強していた。


「アルディ家初代当主はアンリ・ドゥ・アルディ様。彼は剣の精がバラの上に落とした涙から……」

コックリする私をパトリスさんは呆れている。
でもね、すっごく大変なのよっ!!
義務教育でしか勉強していない私が机に座って何かを覚えるって本当に眠気との闘いなのよっっ!!
そんな私を激しく揺さぶってパトリスさんは捲し立てた。

「マリナ様、寝ないで下さい!まだ歴代の当主様の名前も覚えてないんですよ。
それぞれの当主様が成し遂げた偉業、そこからアルディ家の歴史、規則、家訓を学んで頂きます。まだ始まったばかりですよ!!」


考えてみたら歴代の当主って言ったってシャルルがたしか三十一代目だったわよね。って事は前に三十人もいるのよね。
しかもみなさんの名前ってカタカナ。
正確にはフランス語だけど私が覚えるのはカタカナ読み。

うぅぅ…。誰か助けてー!