きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

心をこめて15

メイド姿も板に付き明日でジルとの約束も終わる。今日の午後もやっぱりアルディ家の歴史の勉強…。旧公爵家だけあって歴史が長いのよ!長すぎるっっ!
何度教えてもらっても名前が覚えられない。

「……オリビエ・ドゥ・アルディ、えっと、ル、ルパート、いやルナ、いや違うな。うーんと、ルイ! ルイ・ドゥ・アルディ…」だめだわ。21人でギブアップ!!

やいっっ!シャルルっっ!
あんたはなぜ22代目当主じゃないのよ!
生まれるのが遅過ぎやしない?!
帰ってきたら文句言ってやろう。

パトリスさんはあまりの私の覚えの悪さに頭を抱えてしまった。
でもね、歴代の当主の名前を知らなくたって暮らしていけるわよ!現当主のシャルルの名前だけ分かりゃ充分じゃない?!
だいたいメイドにまで覚えさせるってどうなってるのよ、アルディ家って!



私がブツブツ文句を言ってるとパトリスさんは温かい眼差しで私を捉えて教えてくれたの。

「マリナ様、メイドになる者は皆、先代のロベール様と現当主シャルル様の事だけなのですよ。貴方は特別なのです。」

私はポカーンとしてしまったわ。
だって2人だけなら私だって簡単に覚えられたわよ。

「じゃあ、パトリスさんはなんで30人も私に教えたのよ。大変なのは見ていて分かってたでしょ!」

私は頬を膨らませて少し怒った口調で文句を言った。からかっていました~。だったらぶつわよっっ!!





「ジル様からの御依頼だったのです。
貴方がこちらでメイドになる事を決めた時から学習計画はジル様によって作成され、実行されていたのです。

マリナ様が近い将来、アルディ夫人となられる方だからです。歴代のご夫人の方々も同じように学ばれたのですよ。」

私は突然この話題に登場したジルに驚いた。仕事をさせて欲しいとお願いした時に別邸で働ける段取りをしてくれていたのは、もちろんジルだった。

でも私の目的とは別にジルにもちゃんと目的があったって事ね!
さすが転んでもタダでは起きないアルディ家の参謀役ね。
何だかおかしくなってきて私は
「参ったわね…」と静かに笑ってみせた。
そういう事なら明日までに残りの8人も頑張るしかないわね。本当ならそれぞれの偉業も覚える予定だったらしいけど名前だけで今回は終わりね…。シャルルのお嫁さんに本当になれるのか不安になってきた……。



私は控え室のソファで足を投げ出すとゴロンと横になる。この別邸に通うのも明日で終わりだと思うと寂しさを覚えた。
あれこれ思いを巡らせているうちに、夢の中へ意識をさらわれていた。

ーーーシャルルが純白のタキシードに身を包み胸には赤い薔薇。サラサラの白金の髪がきらめき、伸ばされたしなやかな腕が私に向かって伸びている。さあ、おいで。と言わんばかりに…。
私は見惚れながらも吸い寄せられるようにシャルルに向かって歩き出すと、シャルルが二人に増えたの!!

ミシェルっっ?!
二人は肩を並べて私に向かって手を伸ばしていたの。その両方の手を取ると二人は花が開くようにふわっと笑った。まるで鏡のようなだわって思った所で目が覚めた。この所、二人の夢をよく見るの。

また寝てしまったのね。ふと人の気配を感じて辺りを見渡すと窓辺にもたれ掛かり外を眺めているミシェルがいた。

「ミシェル!! ここで何してるの?」

切なげな瞳で私を見つめている。ミシェルはツカツカと私の方へ歩み寄りソファに横たわる私に覆いかぶさってきた。

「何してるのよ!ミシェル。どいてよ…。」私は覆いかぶさるミシェルの胸を押し返そうと腕に力を込めたけれど、ビクともしなかった。
両肘を私の顔の横に置くと頭を固定して私の自由を奪った。
青に近い灰色の瞳がすぐ近くにあって揺らめいている。

「待ってミシェル!急にどうし…」

手で口を塞がれてそれ以上喋れない。

「少し黙って。明日で君が来るのも最後だし、だったら君をオレのものにしようと思って来たんだよ。オレをシャルルと思えばいいだろう。だからオレのものになって。」

びっくりして私は目を見開き、バタバタと暴れたが男の人の力に勝てるはずもなくミシェルは天使のようなカーブを描いた頬を傾けた…。
私は目をギュッと瞑って次に来るはずのミシェルの唇が来ないのでそーっと瞼を開けてみるとクックと肩を揺らしてミシェルは笑っていた。

まただわ!私で遊ぶのはやめてちょうだい!

「明日で君のメイド姿も最後だからさ、今夜は一緒に飲まないかと思って誘いに来たのさ。」

ブルーの瞳でウインクすると私の上からさっと離れて扉まで行くと、そこに置いてあったワゴンをガラガラと押してこっちへ持ってきた。ワゴンの上にはシャンパンとオードブル、ショコラにフルーツ盛りがあって私は目をキラキラさせてワゴンに飛びついた。

始める前にきちんと、ミシェルと飲みながら話がしたいから遅くなる事を本邸に電話してジルに伝えてもらったの。この前の事もあったし、騒ぎになるのも嫌だった。事前に言っておけば心配しないわよね。





つづく