きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

心をこめて 序章

私は左手首に輝くブレスレットをじっと眺めながら、シャルルにはたくさんの物を貰ってるけど私は何もしてあげてないなって改めて思っていた。

このブレスレット、もちろんレコーダー機能は断固拒否して外してもらったわ。GPSだけはシャルルが私の安全の為だからと譲らなかったのでそのままだけど。



まんが家の仕事と言えばパリに来てからはさっぱり声も掛からず…。
日本にいた時だって変わらないだろう?……って誰が言ったーっっ?
うるさいっ!ガオーっ!
先立つ物がないのよ。

アルディ家でお世話になってからお金って使う時もないし必要な物はシャルルが揃えてくれるので持つ必要もないまま今日までいたけど、自分でシャルルに贈り物をしたいの。私はジルの執務室へ向かった。私の急な訪問にもイヤな顔もせず、お茶の用意をしてくれた。
ついでに内線でお菓子も頼んでくれたのーー!本当にジルって優しいわ。



「ジル、お願いよっ!ここで仕事をさせてちょうだいっ!」

突然の話に少し驚いた様子だったジルは
青灰色の瞳を大きく開き、すぐに微笑んだ。

「欲しい物があるならシャルルにお願いしたらいかがですか?きっと喜んで用意してくれますよ。マリナさんにならシャルルは命さえも差し出してしまうでしょうね。」

いや、いや、命なんて貰っても困るわっ!ジル、シュールすぎだわ。笑えないのよ!



「そうじゃないのよ……」とぽつりぽつりと私は自分の気持ちをジルに話した。自分の力で手にしたいのよ。シャルルに用意してもらったら意味がなくなるもの。
だけど私に出来る事はとても限られていてアルディ家の外で仕事を探すわけにもいかず、日本に帰って仕事をするのも非現実的だわ。今の私に出来る事を一生懸命考えたあげくに出した答えがアルディ家のメイドさん

するとジルは瞳を潤ませ私を抱き寄せ、柔らかい胸に私をすっぽりおさめてしまった。

「ありがとう、マリナさん。
シャルルをそんなにも想ってくれて。
今までたくさんの贈り物をシャルルは何百人、何千という人から貰ってきました。しかし、そのどれもが心からの、と言うよりは、未来の自分達に利益として還元される事を見越した物ばかりです。アルディ家に近づき、自分の名誉の為であったり世間体のためだったり。
シャルルにではなく、アルディ家当主への贈り物ばかりなのです。

シャルルが心からの贈り物を貰ったのは奥様からとごく僅かな人からだけなのです。マリナさんからの心のこもった贈り物、さぞかしシャルルは喜ぶことでしょうね。こんな日が来るなんて私は本当に嬉しいです。」

ジルは涙を流しながら胸の内を語ってくれた。私は胸がつまる想いだった。そしてちゃんと頑張らなきゃ!って改めて奮起した。


「だからジル、どんな仕事でもするから私に協力してちょうだいね。」

私が言うと、

「何をして頂くか検討しておきます。詳細は後ほどお知らせしますね。
では、そろそろ仕事を再開しないと仕事効率が低下したのか?とシャルルに叱られてしまいますわ。マリナさんもお部屋へお戻り下さい。」

私はお茶のお礼を言って執務室の扉をあとにする。
ジルは机に向かって歩き出すと大きな椅子に深々と腰掛けて仕事を始めた。