きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛は記憶の中へ 32

さぁねって……。
腕を組み、壁にもたれかかる姿はどこからどう見てもシャルルだわ。
だけど声が違う、これはミシェルだ。
当主の資格を失ったミシェルはあの後、マルグリット島へ送られたんだとばかり思ってたけどそうじゃなかったんだ。
でもたしか資格喪失者って強制移送されてその島で一生過ごすんじゃなかったっけ?
それとも二人は仲直りしたってこと?
あれだけやり合ったのに?
でもそうじゃなきゃミシェルがここにいるはずないわよね。
それともシャルルに何か考えがあるとか?
彼女との結婚が認められず、ミシェルに当主の座を渡してシャルルは彼女とアルディ家を出るつもりだとか?

「のんびりと考えごとか?落ちても知らないぞ」

そう言われて自分が手すりの上に立っていたことを思い出した。
そうなると急に足元の不安定さを意識してしまって、地面に吸い寄せられるような感覚にバランスを崩し、体が勝手に前後にふらついてしまう。

「くそっ!バカが……っ」

まるで綱渡りをしている人みたいに両手を広げて、空を掻くあたしを見たミシェルは舌打ちをすると、手すりに飛び乗り、一気にこちら側へ飛び移ると、あたしを後ろから掴んで引きずり下ろしてくれた。
あたし達は後ろに倒れ込みながらも見事、着地に成功。
でもすぐにあたしは自分がミシェルの腕の中にいることに気づき、それを意識して恥ずかしくなった。
意外とたくましい腕や筋肉質な胸筋に後ろからすっぽりと包まれるように抱きしめられている。

「バカか、何やってるんだよ」

ミシェルだとわかっていてもドキドキしてしまう。あたしは慌ててミシェルの腕から抜け出した。

「バカ、バカ、言わないでよ!」

気恥ずかしさからミシェルの顔は見ずに立ち上がった。
けどミシェルは何も言い返してこない。
あれ?っと思って振りかえるとミシェルは左手で自分の右の手首を抑えていた。
きっとあたしを助けた時に手を痛めたんだ。

「手、どうしたのよ?」

心配になってミシェルの前にしゃがみ込むと、

「お前、50キロ以上あるだろ」

それで思わずミシェルを叩いてしまった。

「そんなに……ない……わ……よ!」

ミシェルの登場ですっかり忘れてたけど、今は雪が散らつくパリの夜。
寒さで声が震える。

「急いだ方が良さそうだな。すでに低体温のシバリングの症状が出ている」

「何よ……シバリング……って」

ミシェルは侮蔑な視線であたしを見た。

「骨格筋に生じる不随意で小刻みな収縮だ。そのうちに意識がなくなり、放っておけば凍死する。向こうに飛び移れるか?」

ミシェルの視線の先にはさっき彼がいたバルコニーがある。
うぅぅ……。
できそうにない。
ミシェルはさっき、軽々と飛び越えて来たけどあたしには無理だわ。
あたしが首を振るとミシェルはすっと立ち上がり、突然あたしを抱え上げた。
ひぇぇー!!
バックハグの次はお姫様抱っこ?!

「ちょ、ちょっと!あんた……手は?!」

「いいからじっとしてろ。少しでも動いたら二人とも真っ逆さまだ。オレは上手いこと受け身で着地できるが、お前は鈍いから半身不随だぞ」

「でも……」

「オレに不可能はない」

ミシェルはそう言うとシャルルと同じ青灰色の瞳を光らせ、あたしを抱えたまま一歩、二歩と後ろへ下がった。

「行くぞ」

そこから一気に駆け出し、ミシェルは地面を蹴りあげた。もうあたしは運を天に任せる思いでぎゅっと目を瞑った。

「っっく……!」

次の瞬間、ミシェルの言葉にならない声と共にふわりと体が宙を舞う感覚に必死でミシェルの服を掴んだ。
直後にズンッという衝撃がミシェル越しに伝わってきて、無事に飛び移れたことを実感してホッとしていると、あたしを下ろしながら侮蔑の色をくっきりと映し出した視線でミシェルがあたしを見下ろした。

「お前、見た目以上に重いな」

 


つづく

 


***


みなさん、こんばんは!
今月に入って良いペースで更新できていると思いませんか?🤗✨
今年も残すところあとわずかとなりましたが、ちょっと年内完結は厳し…そ……う…です(私もシバリングw)
でもまだ6日あるのでがんばります。
明日はクリスマス🎄
何か短編を書こうかと思ってたけど、もはや本編も終わらなそうなのにやっている暇があるのか⁉️ってことでやめました💦
イベントに乗れていない今日この頃😣


ちなみにミシェル良く書きすぎたかな😝
そうでもない??