きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛は記憶の中へ 31


雪を纏った冷たい風が頬をなでていく。
まさかこんな雪の中、スリッパのまま外に出されるなんて思ってもみなかった。
当然くつ下なんて履いてない。
足下から伝わる寒さにガタガタと膝がいい始めた。
こうしている間にも体温は少しずつ奪われていく。本当に急いだほうが良さそうだわ。

「よしっ!行くわよ」

三階とはいえ、飛び降りるにしてはそれなりに高さはある。
自らを奮い立たせるように声に出した。
手すりを握る手に力を入れ、地面を蹴った。
鉄棒をする要領でバルコニーの手すりに下腹部を乗せ、同時に両腕を強く伸ばして体重を支える。次に右足を手すりの上に乗せた。ここから一気に体を持ち上げられればうまいこと手すりの上に立てる。あとは下に降りるだけのはずだった。
ところが手すりに足を掛けるまではいいけど、そこからどうにも這いあがることができない。
次第に腕がプルプルと悲鳴を上げ始める。
腕の怠さに耐えきれず、あたしは一旦手すりから下りた。
だめだわ、また最初からやり直し。
それを何度か繰り返すうちに、手すりにはうっすらと雪が積もり始め、腕も足もパンパンになってきてしまった。
息はあがっているのに、氷のように冷たくなった手にはもう感覚がなくなってきている。
かじかむ手を擦り合わせ、手すりに向かってもう一度踏み切った。
足を乗せると同時に腕に力を込め、そこから一気に手すりの上へ。
やった、やっとできた!
しかし、ホッとしたのも束の間、あたしが立っているのは幅のせまい手すりの上。
見なきゃいいとわかっているけど、思わず下を見てしまった。
げっ……!
手すりの上に立っているから自分の身長も足されてかなりの高さだわ。
恐怖でめまいがする。
狙いを定めてちゃんと下りるのとあやまって落ちるのとではわけが違うわ。

「やめておけ」

声のする方を見れば、隣の部屋のバルコニーからシャルルがこっちを見ていた。

「シャルル?!」

「お前の体重をM(50㌔)、瞬間速度をV、時間をtとすれば衝撃力Fは、F=MV/tとなりV=√(2gh)≒6.3(m/s)MV=6.3×50=315(kg・m /s)t=0.2秒。F=315/0.2=1575(kg・ms2)……よって大腿骨折によるーー」

ん?待てよ?
この声って……!?
それにシャルルの部屋は反対の隣部屋だったはず。それにシャルルはあたしの事を《お前》なんて言ったりしない。
まさか……!

「鈍そうなお前のことだから、どうせ落下の衝撃で重心を後ろにもっていかれて、後頭部強打よる脊髄損傷もありうるな」

「なんであんたがここにいるのよ?!」

「さあね」

 

つづく


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みなさん、こんばんは!
ここまでトントンと書いてきましたが、イベント続きで少しペースダウンしちゃいそうです💦あと数話でまとめるつもりですが年内完結ね…自分で言ったもののプレッシャー😅
頑張りまーす✨