愛の証50000hit感謝創作13
和矢の手が伸びてきてさっと動いた気配がした後、今度は頬を傾けて端正な顔をあたしに近づけてきた。
うわっ!近いっ!
いくら昔付き合っていたって言っても和矢レベルの男に顔近づけられたら戸惑うのよ。やめてほしい。つい、ふらふらっとしちゃいそうになるじゃない。
そしてあたしは動けないまま近づいてくる和矢のアップを前に和矢のまつ毛がシャルルに負けないぐらい長いんだなと窮地も忘れて感心してしまった。
「もう大丈夫だよ」
和矢はホッとした顔をしてあたしの肩を掴んでいた手を離した。
あたしは何が大丈夫なのかさっぱり分からないままとりあえずホッとした。
「お前の肩に毒虫が止まってたんだ。どこも刺されてないみたいで良かった。シラカバ毒蛾っていうやつで刺されると結構やっかいなんだ」
和矢はどこも刺されてないか確かめようとしえ見ていただけなんだと知ってあたしは恥ずかしくなった。和矢はキスするつもりなんて初めっから無かったのにあたしったら一人で焦ったり戸惑ったり何しているんだろうとおかしくなった。
その直後あたしは凍りついたようにその場から動けなくなってしまった。
なぜってそんなあたし達をじっと見つめている愛しい人の姿がその先にあったから。
シャルル……。
真っ先に考えたのは勘違いされたってことだった。きっとシャルルのいる場所から見てたらあたし達が何かをしていたように見えたのかもしれない。あたしの背中に冷たい物が流れていくような感じがした。
やっと和矢がシャルルとの関係を取り戻そうとパリまで来たのにここに来てまた二人の関係が壊れてしまう。
そんなあたしに気付いた和矢があたしを庇うように一歩前に出てシャルルと向き合う形になる。待って!これじゃ完全に戦闘モードじゃない。
さらにシャルルは一歩ずつあたし達に近づいてくる。その表情は凍りついたように冷たかった。
和矢の前でピタリと足を止めると真っ直ぐに和矢を見据えた。
「昔を思い出しでもしていたのか?」
あたし達が再び惹かれ合っていると思ったんだ。その言葉には裏切られ、傷ついたシャルルの心が壊れていく音が混じっているようだった。
あたしが誤解なのっ言おうとするより前に和矢が口を開いた。
「ああ。昔を思い出していたとこだ」
「きさまっ!」
その瞬間シャルルは和矢の胸元を掴み上げて自分の方へ引きずり寄せるとその頬に拳を入れた。和矢は堪らずに倒れ込み、口元からは血が滲み出ていた。
あたしは和矢の前に立ち塞がるようにしてシャルルを止めようとした。
「待ってシャルル!誤解なのよっ!」
和矢は立ち上がりあたしを手で払うようにしてその場から離れるようにと言わんばかりにあたしの前に立った。
「マリナ、下がっていろ」
どうしてシャルルを煽るような事を和矢が言ったのかは分からない。でもあたしはどうしたらいいのか途方にくれるばかりだった。
まさかこんな事になるなんて……。
つづく