きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛はそこにある…je crois 26

ロラン・リオンヌ。
分家の中でも上階層に位置し親族会の中でも発言力のある長老だ。
だがこのままオレが黙って婚約するとでも思っているのか。

ヒースロー空港からヘリを飛ばしてグラストンベリーへと向かった。車で移動していたら3時間はかかってしまう。
モンドフォール家へ降り立つと執事が出迎えに来ていた。
本邸の玄関先までしばらく歩くとモンドフォール家当主らしき中年男性が出迎えてくれた。


「シャルル・ドゥ・アルディです。
こちらはジル・ラ・ロシェル、私の秘書です。急な訪問にもかかわらずご了承頂き、ありがとうございます。」


「アルディ様、ようこそおいで下さいました。私はデリック・モンドフォール・ロード・オブ・グラストンベリーと申します。私もすぐに伺いますので、少し応接間にてお待ちください。」

モンドフォール氏は電話で話しただけだったが気難しい印象は全くない。
どちらかと言えば温厚で当たりも柔らかい。簡単な挨拶を交わし、応接室へと通された。

旧貴族に与えられた領地をシノンという。領土の特権保有が廃止された19世紀以降に爵位を得た新貴族はこのシノンを持たない。
シノンを持たない新貴族の名乗りは爵位と名前だけだ。
だがモンドフォール氏は旧貴族の戦功の褒美が領土であった名残りなのか所有するシノンも名乗っている。
モンドフォール家は貴族と言っても名ばかりで財力も余力もほとんどない旧貴族のようだな。
この応接間の品々がそれを裏付けていた。
つまりアルディ家が進んで縁談を持ちかける家柄ではないのは一目瞭然だ。



モンドフォール氏が応接間へ戻って来るとさっそく要件を伝えた。

「さっそくですが、クレール・リオンヌ
をご存知ですか?
クレアシオン=レガリアの交渉にあたったアルディ家の者です。
勝手を言って申し訳ないのですが、彼が貴家に持ち掛けた縁談の話は無かった事として頂きたい。」

モンドフォール氏はソファに深く座り腕を組み、床に視線を落としている。考え込んでいるのか肘に添えた指先を頻りに動かしている。

「分かりました。縁談の話は聞かなかった事にします。フランスの名門アルディ家へと嫁がせるなどやはり無理だったようですね。だが当家としては断る理由もなかったと言うだけの事です。いいでしょう。
それでは、クレアシオン=レガリアはどうしますか?クレール氏より交渉の延期依頼は断るようにとの事だったが…」














モンドフォール氏とクレアシオン=レガリアの取引の交渉再開を約束し、オレとジルは早々にパリへと戻った。

「ジル、クレールが動き回っていたのは明らかだ。モンドフォール氏との取引が無事に終わったら親族会議にかけてやる。ロラン・リオンヌが裏で動いていた証拠を探してくれ。本家への侮辱及び背信行為で追放してやる。やられたら倍で返す!」




アルディに戻ったのは深夜遅くになってからだった。日本はすでに朝か…。
マリナへ携帯を掛けようとしたが、反応がない。どうなってる?!
他の携帯でマリナへ掛けてみたが全く反応がない。まさか解約したのか?

この時間では問い合わせ出来ないか。
それなら…。

フランス.テレコムの顧客管理システムへとアクセスした。
複雑に暗号化されているが…。解読し解除までに要した時間は数分程度だ。
オレが構築したアルディ家のメインシステムには到底及ばない。

マリナに持たせた携帯はすでに解約手続きが取られ、オレの名で行われていた。
クレールの仕業かっ!
必ず責任を取らせてやる!


交渉再開と言っても値段の折り合いがつけばすぐにこちらから引き取りに行く事にしてある。いくら要求してきても契約成立させ必ずこの手に取り戻す。
延期を断らせるとはクレールには回りくどい真似をさせられたものだ。

翌朝にはモンドフォール氏から値段の提示がある。これで契約成立だ。
オレは少し仮眠を取ることにした。
日本へ行ってからは、ベッドでゆっくり眠る時間も取れなかったのもあってオレはすぐに眠りに落ちた。





だか、眠っている間にまさか状況が変わるとは思いもしていなかった…。








つづく