きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛はそこにある…je crois 28

「すぐにクレアシオン=レガリアの行方を追うんだ。」



昨夜オレ達がモンドフォール家を出た後に取引を持ち掛けた人間がいるはずだ。
果たしてそんな短時間でモンドフォール氏が取引を成立した理由は何だ。

破格の値段を提示されたのか。
しかし、クレアシオン=レガリアはアルディ家にとっては家宝だが他の者にとってそれほどの価値があるとは思えない。
ならば何故だ…。


クレールが動いたなら家宝を取り戻すための縁談話の意味がなくなる。いくらロラン・リオンヌが上階層の分家と言っても取引を成立させるほどの資金が用意できたとも思えない。


一体誰なんだっ…!?



「それからクレールをすぐに執務室に来るように伝えろ。」


クレールの尋問は取引成立後にするつもりでいたが、先に決着をつけておくか。
オレは身支度を整え、執務室でクレールが現れるのを待った。

しばらくして几帳面に扉がノックされた。

「入れ。」

重厚な扉が静かに開けられクレールが一礼をして入室する。
呼ばれた理由は理解しているのだろう。真っ直ぐにオレの前まで来ると姿勢を正した。
オレは椅子に深く座り、組んでいた腕を解き机の上で手を組み直した。

「クレール、今回の事すべて説明しろ。話によってはアルディ家本家への背信行為とみなし、リオンヌ家への責任を親族会議にて追及する事になる。」


「分かりました。私の知っている事をお話します。どうかリオンヌ家なりの本家への思いを汲み取って頂きたい。」


「感情論は不要だ。事実だけ話せ。」


「今回の件はすべてアルディ家のためなのです。」


オレから目を反らす事もせずにクレールは全てを話し終えるとオレの判断を待っていた。恐らく彼自身はアルディ家のためにただ動いていたのだろう。

クレールの話ではアルディ家の情報網によりクレアシオン=レガリアをイギリスで発見。一報を受けすぐにアルディによって交渉を成立させていた。これを利用してロラン・リオンヌはマリナをアルディから遠ざける計画を立てた。
平凡的な東洋の娘はアルディ家には相応しくないという理由だ。


すでに成立していた取引をわざわざオレに交渉させ、あとは交渉前日にマリナを誘拐する計画だったらしい。
当然オレは先方に取引の延期を申し出てマリナを探し回ると踏んだんだろう。ところがヒビキヤの危篤の知らせが入り誘拐は実行しなくて済んだ。

予定通り、オレからの延期申し出は断られ、モンドフォール家との縁談によって取引不成立を補う段取りだったのだ。
マリナよりも偶然でもアルディ家の家宝を持つイギリス伯爵家の令嬢の方がマシだと判断したのだろう。
フランス国内で相応しいと思われる家柄候補はいくつもあるが、オレが認めない事は分かっていたのだろう。



首謀者はやはり父である、ロラン・リオンヌだったか。
アルディ家のためとは言え、当主のオレを欺き、結果的にクレアシオン=レガリアを回収出来なかったのは彼らの責任だ。
オレからの取引延期を断るようにモンドフォール氏に言ったのはクレールだ。
親族会での立場も下階層になるだろう。
いや、オレへの、そしてマリナへの侮辱は許さない。


「本家への背信行為とみなし、リオンヌ家は分家の資格を剥奪。ロラン、クレール両人はマルグリット島へ移送だっ!」


クレールは信じられないといった顔で目を大きく見開いているばかりだった。
両手は硬く拳に握られ、唇を噛み締めている。


「と、言いたい所だがクレアシオン=レガリアを探し出しアルディ家へ持ち帰る事が出来たら考え直してやる。」



「必ず探し出してみせます。」





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ベットで寝転がったまま手首に光るブレスレットを眺めていた。
シャルルと共に過ごした幸せの記憶が私をひどく苦しめる。


「誰よりも愛してる」と私は言った。
それは今でも変わらない。

「間違いだったと言われてもオレから離れる事はもう2度と許さない。」
とシャルルは言った。

それでも私は離れてしまったんだ。
再びシャルルの背中を見送ってしまった。
自分で選んだ道。シャルルのため?
ううん、違う。シャルルが当主を追われるなんて私が耐えられなかった。

ミシェルとの当主争いでシャルルはアルディ家から追われ、苦しい逃亡生活を強いられた。
アルディ家の正当な後継者として生まれ育ったシャルルにとって、どれだけの屈辱だったかと思うと今でも胸がつまる思いだった。

あんな思いをさせちゃいけない。
たとえ2度とシャルルに会えなくても。



でも本当は……
ずっとそばにいたかった。

切なくて孤独に震える私を包んでくれる人はもういない。
涙がこぼれ落ちても拭ってくれる人はもういない。
愛を囁いてくれる人はもういない。




ねぇシャルル……やっぱり…
私、寂しいよ…。






陽が落ち始め夕日が辺りを赤く染めていく。また1日が終わってしまう。
しっかりしないとダメなのは分かっていても心がついてこない。



コンコン…。静寂に包まれていた部屋に緊張が走る。

誰だろう?

もしかして…っ?


私は慌てて玄関へと向かい、鍵を開けるのももどかしく扉を押し開けた。
裸足のまま玄関先へ降り立ち、その姿を求めるように私は外へ飛び出した。





「マリナ……」



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みなさん、こんにちは

ここまで読んでくださってありがとうございます。こうして訪問してもらう事が何よりの励みです。

今回は、こんなところで止めてしまってすいません(;^_^A つい…
真相が明らかになりましたね!
シャルルの怒りがリオンヌ家へ…。
果たして家宝はどこへ…?


それから更新時間21時を基本にしてましたが、仕事で遅番が続くため日中に変更すると思います。
これからもよろしくお願いします。

きらより