きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛はそこにある…je crois 20

「アルディのICUを使えるように準備をしておいてくれ。
明日、ヒビキヤをジェットで空輸する事にした。それから彼の市民籍の準備をしてくれ。」

ヒビキヤをここから移動させるのは絶対に安全と言うわけではない。しかし、今回のような事が起こらないとは限らない。ならばパリで治療する方が確実だ。

ジルにいくつか指示を出した。
オレは明日の出発の準備もあるので早々に要件だけ言って切ろうとしたら電話の向こうでジルが気になる報告をしてきた。


「シャルル、こちらで気になる動きがありました。今、お話してもよろしいですか?」


「なんだ?」


「親族会議長補佐のクレールがこのところ頻繁にイギリスへ渡ってます。
その行き先はモンドフォール家だと思います。
初めは3ヶ月ほど前です。シャルルが最初の交渉に入る直前です。それから1ヶ月ほどして再び訪問してます。
この直後にヒビキヤ氏の件があって交渉は決裂しました。
そして今朝、クレールはまたイギリスへ向かいました。」


「もっと詳しく調べろ。
報告は何時でも構わない。」

クレールか…。クレール・リオンヌ。
たしかリオンヌ家は分家の中でも上階層
だったな。

一体何が目的だ?
リオンヌ家は今回のクレアシオン=レガリアに関与しているのか…。




ヒビキヤの空輸に備えてコンテナ内の設備を点検し万全な体制を整えなければならない。パリまで12時間、この間は問題が発生しても限られた事しかできない。
朝までに彼に関する資料及びデータを全て回収する必要があった。
ここにヒビキヤは存在していなかった事にし、パリへと旅立つ。






窓の外を見れば夜の暗闇を追い立てるように空は次第に明るくなり始めた。
ヒビキヤの最終チェックをしてコンテナへと移す準備を始めるか…。


「状態も安定しているので予定通り、パリへと移送します。御協力に感謝します。」

大野院長に挨拶を済ませ、マリナ達の到着を待って空港へと向かった。アルディのジェットにコンテナを収納する作業に時間が掛かるため職員に案内され空港内のVIPルームで待つ事になる。


******************


「空港にこんな部屋があるなんて始めて知ったぜ。さすがフランスの要人は扱いが違うんだな。」

薫が珍しく感心しながら部屋を見て回っている。
彼女だってファーストに乗るお金持ちだけどここは一般の人は入れないんだって。政府関係者や要人など限られた人間だけしか使用許可が出ない。
拳銃装備のSPを連れている場合が多く、通常ゲートは通らないからみたい。
シャルルの周りにはSPは見えないけど、何処かで警護しているのかな?
隠れて守ってるなら、まるで忍びよ。 


準備が出来たら出発になってしまう。
ゲートをくぐってしまったら終わりよ!
出国扱いになっちゃうもの。その前に言わなきゃ。

ガイはパリを経由してイギリスへ帰るみたいだけど薫は日本に残るって話してた。私は意を決して話を切り出した。

「私、もうしばらく日本に残りたいんだけど…。アパートもそのままだし薫とももう少し一緒にいたい。
ねぇシャルル、いいでしょ?」

突然の私の提案にシャルルは凍り付いたように一瞬動きを止めた。

「アパートへは昨日行ったはずだが…。もし残るとしていつ帰ってくる予定だい?」

言葉に詰まってしまった…。いつ戻るって言われても答えられない。
でも何か言わなきゃっ!

「実家にも顔出したいし、せっかく日本に来たから寄りたいの。年が明けたら帰るわ。」

これしか思いつかない。
どうかシャルルがいいよって言ってくれるといいんだけどな…。
シャルルは腕を組んで片方の手を顎に当てながら考えこんでいる。

新年は一緒に迎えようって話していた約束も果たせなかったな。

「分かったよ。帰る日が決まったら連絡をするんだよ。それから携帯は常に持ち歩く事ように。いいね?
それからこれを渡しておく。好きに使って構わない。」

そう言ってゴールドカードを渡された。
え?ってシャルルを見上げたら、

「君は一文無しだろ?パリからそのまま来たからね。必要な物はそれで揃えるといいよ。」

胸の奥に痛みが走った。
何の疑いもなく、しばしの別れのつもりのシャルルを見ているのが辛かった。
パリに帰ってから婚約の話を聞かされて真実を知ることになるのかな。
その時、シャルルが何を思い、どんなに傷つけてしまうかと思うと胸が苦しい。

そして何よりも…ここでさよならもありがとうも言えないまま、一生会えなくなる事が辛かった。その瞬間は刻一刻と近づいている。
せめてありがとうの言葉だけでも伝えたい。

「シャルル色々ありがとう。
予定を済ませたら連絡…す……ね。」

涙で言葉が詰まる。
そして心の中で本当に愛している…どうか幸せになってね、と願った。

「マリナ……?」

頬に冷たい手が伸びて私の体温を奪いながら次第に暖かくなる大きな手。
私を包み込むように、そして愛おしそうに…。

私の頬を生温かいものが伝って落ちる。
その瞬間、大きな胸に抱きすくめられていた。

「離れるのが辛いなら一緒に帰ろう。
マリナ、また日本に来ればいい。
だから泣くなよ。見てるこっちが堪らない。」

この温もりで終わりにできる。
シャルルの香りに包まれて、こんなに優しくされたらもう十分だわ。
これ以上は辛くなるだけ。

「ずっと一緒にいたから急にグッと来ちゃった。でももう大丈夫。シャルル、気をつけて行ってね。私は残るわ。」

逞しい胸から顔を上げてシャルルを見上げて言った。

「本当に残るのか?」

私は大きく頷くと笑顔を見せた。

シャルルは頬を傾け唇を重ねた。触れるだけのキス。シャルルとの最後のキス。
離れた瞬間に2人の間に風が通り過ぎた。2人を繋ぐものはもう何もない…。
でももう泣かない。泣いたら心配させてしまう。

その時、扉をノックして職員がフライトの準備を終えた事を伝えに来た。

「では行こう。マリナ、必ず連絡するんだよ。」

VIPルームを出るとそれぞれの進む道へと歩き出した。

別れ際に薫が改めてシャルルへと言葉を掛けた。

「あたしは日本での用事が済んだらまたパリに行くよ。どうか兄貴をよろしく頼む。あんたには世話になってばかりで申し訳ないな。」


「オレがしたくてやっていることだ。気にする事は何もない。」

「そうか…。またお邪魔しにいくよ。」


薫はふわりと笑顔を見せると私と並んで彼らを見送った。


さよなら…シャルル。




ーそれにしても様子が少しおかしいなー





つづく



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みなさま、こんばんは!
クリスマスが終わるといよいよお正月が来ますね。何かと忙しくなる時期です。
私は年末年始は無休で仕事です(>_<)
そのため更新ペース遅くなるかもです。

ついに別れてしまいました(泣)
このままで新年はいやですよね?(^_^;)
私もそう思います😥

待っててくれる方がいると信じてなるべく更新したいと思います。←前にも言いましたね(笑)
今回はおねだりしませんよ(≧∇≦)