きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の祈り(番外編)4

目が覚めた私が隣の部屋に行ってみるとソファで寝ているはずの薫はいなかった。どこに行ったんだろう。しばらく部屋で待ってみたけど帰ってくる様子もないし困った私はメイドさんに薫を見なかったか聞いてみたの。
そしたら薫のやつ、あの後ゲストルームを用意してくれって頼んで部屋を移動していたのよ!

私には夜中に頼むのは悪いし、誤解されたくなかったらやめろって言ったくせに自分は頼むなんてひどい。
文句を言ってやろうと思ってメイドさんに薫の部屋まで案内してもらうとシャワーから出たばかりの薫が気だるげにドアを開けた。濡れた髪が額に零れ落ち、こっちを見つめてきらめく眼差しの甘やかさにメイドさんはうっとりとため息をついている。その様子を見ると薫がニヤッとした。
私の腕を掴むと一気に引き寄せて腕の中に私を強く抱きしめた。

「きゃーっ!!マリナ様がっ!」

メイドさんは途端に大悲鳴!
自分が迂闊に案内をしてしまったせいで、私が薫に抱き締められたもんだから焦ったようだった。メイドさんにしてみればいきなり私が男に抱きしめられたんだもの。そりゃ驚くわよね。すぐに薫が私を離したから騒ぎにはならなかったけど、悪ふざけしてるとこの屋敷は飛んで来るわよ。警備がっ!
あんた連行されるわよっ!

メイドさんに薫は女である事をちゃんと説明すると彼女は改めて薫をみて、ため息を漏らしていた。お気持ちは分かるわ。どう見ても男よね。

部屋に押し入ると昨日のゲストルームの事について文句を言った。

「ばかだな。よく考えてみろよ。
あたしと何かあってシャルルの部屋に戻れないって誤解されるより、男だと思われてるあたしと朝まで一緒の方がまずくないか?」

今思えば確かにそうだわ。薫を見かけたメイドさん達もきっと男だと思っていたはずよね。

「昨日は、ああでも言わないとおまえさんゲストルームを用意させるのをやめそうになかったから言っただけだよ。他の部屋なんか借りさせたらあとでシャルルに何て文句言われるか分かりゃしない。なんせあの部屋の外には警備員が張り付いていたからな。
おまえさんも大変だな!あいつ相当、面倒くさい男だぞ。」

怒りも忘れて私は唖然としてしまった。それであのゲストルームに泊まるか、シャルルの所に戻るか聞いたのね。警備員が見張っていたってこと?!このお屋敷に入る前にはちゃんと警備員がチェックしているのにね。面倒くさい男って…ねぇ。ひどい言われようだわ…あはは。


昔と変わらない薫の皮肉も、危険な香りの甘やかなムードも人を小馬鹿にした態度も今こうして感じられるのもシャルルのおかげだと思った。あの時、兄上の死刑執行を目の当たりにした薫は自らも死にたい、死んでしまいたいと思ったに違いない。そうでなければ、シャルルが100%あり得ないと言ったケースにはならないはずだもの。

兄上を失った悲しみと悔しさと絶望で薫が自分の命を絶とうとしているように私には思えた。だからこそあの時、兄上を助けて欲しいと願ったの。兄上が生き返ればきっと薫も助かる!あの時は確かにそう思えたの。私はシャルルに助けてと、兄上を生き返らせて!と懇願した。
兄上が帰ってこなければ、このまま薫は二度と帰ってこないと思ったの。出来る事と出来ない事があるのも分かっていた。無理な事は分かっていた。それでも私は願わずにはいられなかった。

そして今、薫は私の目の前にいて笑っている。私は薫を失わずに済んだの。兄上は未だに眠ったままだと薫は話していたけど機械に繋がれながらでも確かに生きていてくれることが薫の希望となっているはずだった。いつかその目を開けてくれる事を祈る事ができる。生きてさえいてくれたら……。




fin


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みなさま、こんばんは!
愛の祈り番外編を最後まで読んで下さってありがとうございました♪
続編(愛はそこにある…je crois )への序章として創作した物です。