きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

マリナBD創作(後編)

睡眠導入剤のおかげでぐっすりとお昼近くまで眠ってしまったわ。
今日は私の21歳の誕生日。タイミングが悪くてシャルルはスイスへ行ってしまって帰りは明日なのよね…。

「仕事だから仕方ないわよね!忙しいのは今に始まったわけじゃないわっ!」

自分を元気づけると昼食を簡単に済ませた。それにしても今だに誰1人として私におめでとうの一言も声を掛けてくれない。
パリに来てからは毎年シャルルが居てくれたし、自然と周りの人達もお祝いムードだったんだけど、やっぱりシャルルがいたからお祝いしてくれていただけなのかな。シャルルが留守だとこんなものか…今年は寂しい誕生日ね。

どうしてこんな気持ちになるんだろう。部屋に1人でいると涙が溢れてきて止めることが出来なかった。しばらくして扉をノックする音は聞こえてきたけど泣いているのを見られたくなくてベットに潜り込んでシーツを頭まで被った。

「マリナさん、入りますよ。」

ジルの気配が近づいて来て羽布団の上からそっと私の背中をさすりながら優しく語りかけてきた。

「マリナさん、困った事や辛い事があったら相談してください。マリナさんは私にとって大切な方なのです。今日一日執務室に居ります。何かあればいつでも呼んで下さい。」

思いが溢れ出し胸の傷を辿るように涙が流れた。不安な気持ちが抑えられなくなってしまった!

「私はこうしてずっと1人なのかな。シャルルがいつも側にいてくれるわけじゃないもの。寂しくて堪らないの!
こうしてシャルルの帰りをじっと待っているだけなの?」

私はベットから出るとジルが止める手を振り払って部屋を飛び出した。
ジルに当たってどうするのよ…。でも出て来てしまった手前、今さら戻ることも出来ずに庭をひたすら歩いた。ジルも追いかけては来なかった。
泣きたい気持ちでいっぱいだった。私は何しているんだろう…。

私は敷地内の最奥にある紅離宮に来ていた。自然を母体として池を中心に築山が配置され四季折々で楽しめる草木が配されている。池のすぐ横には茶室が設けられていて、ちょっとした休憩も出来るようになっている。
日本庭園を模したこの場所は寂しい時はいつも私の心を包み込んでくれる。ここはアルディ家に来て初めての私の誕生日にシャルルがプレゼントしてくれた物だった。腰を下ろしてしばらく池を眺めていた。午後の陽射しが弱まり始めて、辺りの空気が冷んやりとしてきた。そこまで夕刻が近づいている事を告げていた。
泣いたまま1日が終わってしまう…私の特別な日。








ふわっと何かが私を包み込んだ。

「寒くない?」

振り返るとそこにはシャルルが立っていた。肩に掛けられたのはシャルルのチェスターコートだった。
シャルルの香りと温もりに包まれて涙が溢れてくる。シャルル帰って来たのね。
シャルルは青灰色の瞳を揺らすと切なげな光を走らせ、私を抱き寄せた。

「マリナ…もう泣かないで。寂しい思いをさせてごめん。しばらく何処へも行かないから。」

シャルルの腕に抱かれながら私はコクンと頷いて確かにシャルルがここに居ることを確かめる。徐々にさっきまでの寂しさや不安が収まってきた。

「どうして…?帰りは明日って…」

シャルルを見上げて尋ねてみる。だって
本当なら明日帰ってくるはずだもん。

「学会の予定が早まったんだ。それに急遽ヘリを飛ばした。どうしても今日中に帰りたかったんだ。さあ屋敷に戻るよ。もう祝いの準備も出来てる頃だろう。」

「シャルル…っっ?」

「マリナ、誕生日おめでとう。誰よりも1番に言いたくて屋敷の者にはオレより先に言うなと伝えてあったんだが…」

あっ…!
それで誰も言ってくれなかったのかもしれない。まさかシャルルがそんな事を言い伝えているとは思ってなかった。
私の驚いた顔を見ると何かを悟ったようだった。

「まさか、マリナ…。忘れられてると思ってたのかい? それならまだ自覚してないのか?」

え?何の話をしているの?
シャルルが何を言ってるのか分からなくて首を傾げる私。とにかく冷えるからと言って屋敷に戻った私は私室に届けられているたくさんのプレゼントの山を見て驚いた。さっきまでこんなの置いてなかったのに…。
シャルルは私にソファに座るように促すと私の前に跪いた。
小さな小箱から指輪を取り出すと私の薬指にはめて魔法をかけるみたいにキスを
した。プラチナのリングの中央には大きなブルーサファイア、その周りにダイヤが施されている。まるで薔薇が咲き誇ったかのようなデザインだった。

「君のためにオレがデザインして作ったんだ。誕生日おめでとう。それからもう1つ、これもだ。」

渡されたのは手のひら程の大きさの箱だった。蓋を開けてみると中には小さな銀のスプーンが入っていた。

「銀のスプーンを贈られた子供は幸せな人生をつかむと伝えられているんだ。オレが贈られたのと同じ物だよ。」

よく見ると柄の部分にはアルディ家の紋章が彫られていて、その横には…愛する我が子へ シャルル・ドゥ・アルディと刻まれていた。

「マリナ、オレと結婚してほしい。君を必ず幸せにしてみせる。心から君を愛しているよ。オレは君とその子をずっと守ると誓うよ。」

その子って私たちの赤ちゃん?
私は信じられない思いでシャルルを見つめるばかりだった。

「妊娠初期は情緒不安定になることがあるんだよ。急に泣きたくなったりイライラしたり。不眠や食欲の減退なんかも起こるんだが、君の様子からそうだと確信したんだ。日数から計算しても100%間違いないだろう。睡眠導入剤は胎児への影響を考慮してオレが調合したサプリを用意しておいたんだ。ジルから貰っただろ?君も気付いているかとは思っていたんだが甘かったようだな。」

寂しくてあれほど泣いた事も寝付けなかった理由も孤独を感じていた事の理由も全部理解できた。

「君の誕生日にプロポーズしようと考えていたし、当初学会の予定は昨日だったんだ。それが先方の都合で遅れてしまってね。それでオレは早く切り上げるように急かしたんだ。だが、君も分かってると思っていたから、不安にさせてしまうとは想定外だった。使用人たちも君の誕生日を知らないなんて事はありえないよ。君はアルディ家の人間になる女性だからね。言わないのではなく言えなかったってわけだ。」

「私、1人で不安になっていたの。誰からも祝福もされずに寂しい誕生日を過ごすんだと思ったら辛くて。シャルルもお屋敷に帰って来なくて…。このままずっと1人なんじゃないかって思って苦しかった。」

その途端シャルルが私を強く抱きしめて絞り出すような声で言った。

「1人になんか絶対にしない。寂しい思いだってもうさせたりしない。マリナ、君がいればオレは他に何もいらない。君さえいてくれればそれでいい。毎日一緒に居たいと思うのはオレの方だよ。君を1人置いていかなければならない時の切なさは何度経験しても慣れる事はない。日本に行く事も兼ねて明日から10日ほど休みにしたんだ。君のご両親にも会わないといけないしね。マリナがイヤだと言うぐらい、一緒にいてもらうよ。」

それで出張も多くて帰って来られなかったんだわ。誕生日に向けて無理をしてくれていたなんて胸が熱くなる。こんなに愛されていたのに寂しいなんて言ってごめんなさい。

「シャルル、こんなに大切にしてくれてありがとう。誰よりも愛して…」

シャルルが私の唇を塞いだ。1人寂しく泣いた夜も、シャルルを恋しく思った日々も、孤独を抱えて涙した事も、シャルルが全部忘れさせてくれた。
ソファに押し倒され激しく愛を注ぎこむようなキスに涙がこぼれた。
悲しみの涙じゃない、幸せの涙が私の頬を伝う。今日を絶対に忘れない…。



私の特別な誕生日…。







fin
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最後まで読んで下さってありがとうございます(o^^o)
サプライズ好きな私のマリナちゃんへのバースデープレゼントはシャルルからのプロポーズでした。
マリナちゃん、誕生日おめでとー!!
どうしても銀のスプーンを使いたくてプレゼントとして使いました。
シャルルが祝福してくれる新しい命。
きっとシャルルの計画通りだったのかも(≧∇≦)
だってシャルルなら間違ったりしないものね…\(//∇//)\