日本からの取材依頼にマリナはすっかり浮かれていた。
仕事をする必要があるのか…。
オレの目が届かない場所へ出掛ける事はずっと避けてきた。
今回はシリルと一緒なのもあって許可はした。だが、危険が無いわけではなかった。
マリナの身元については度々、親族会議で話題になっていた。
反対する者も中にはいた。
しかし、オレはマリナ以外と結婚する気がない。
それが分かっていて親族会議でも、このところマリナの出身には触れずにきていた。
そんな中で今回の事件が起きた。
マリナが撃たれた…!!
オレはこの身が裂けてしまうのではないかという恐怖と苦痛に襲われた。
アルディに入った情報によるとセーヌ河岸から船に向けて銃撃されたと。
取材に出掛けると言うのでオレ専属のSPをこの日はマリナ就かせていた。
襲撃直後にSPから連絡が入り、マリナは軽傷、シリルは重傷との報告と共にシリルのSPの一人が二人をかばって危険な状態であると連絡は受けていた。
アルディに到着したマリナを診察室で見た。失ってしまうかもしれない不安と恐怖に襲われていたオレの心はマリナの姿を捉えると一気に解放された。
指先まで凍りついたように冷たくなったオレの心は一気に高揚し体の中から湧き上がるものがあった。
腕に裂傷が見られたが、想像していたものより軽傷でオレはやっと気持ちを落ち着ける事ができた。
だが、オレとの生活を終わらせたいと言い出した…。
マリナがオレから離れる事は認めたくなかった。それ以上にマリナを愛しているから自由を…。オレと一緒にいるとマリナは泣いてばかりだ。
平穏を願う彼女にオレの、いやアルディの束縛は苦痛にしかならなかったのだ…。
オレは自分の想いを封印する事を選んだ。
数日後、容体も安定していたシリルが姿を消した。
行き先は日本だった。
マリナが病室に顔を出さない理由は散々聞かれたが説明する気にならなかった。
それから、一度見に行くべきか…。
そして、日本へ。
引き続きマリナの警護も兼ねてジルを日本へ行かせていた。
ここ数日、シリルがマリナのアパートに訪ねてきているのも報告が入っていた。
シリルの真意を見極めるために準備は整った。
つづく