きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

創作 2和矢編

オレはマリナとディナーを終えると部屋の前で分かれた。部屋に入って奴のホットラインへ掛けてみる。アルディ家の代表番号に掛けた所で繋いではくれないだろうと思っていた。
5コールで繋がった。珍しくシャルルが捕まった事にホッとした。
「久しぶりだなシャルル。急で悪いんだけど今パリに来ているんだ。少し会わないか?」
用件だけ伝えた。奴は忙しいから長く話していられないのはいつもの事だ。

「いつまでこっちに居られるんだ?
今からアルディへ来ればいい。」

シャルルからの提案には乗れなかった。朝にはマリナとロビーで待ち合わせしていたからホテルを離れるのは躊躇った。
それを話すと
「マリナも一緒なのかっ?! 今そこに居るのかっっ?!」

シャルルの必死な様子に嫉妬しながら、

「マリナは隣の部屋だぜ。夕食の後にそれぞれの部屋に分かれた。もう休んでると思う。だからお前がホテルに来ないか?」

シャルルは少し考え「ウィ」と言うとルームナンバーを聞いて不満気だった。仕方ない。奴は普段からスイートにしか泊まらないから下階は窮屈なんだろう…。

しばらくするとチャイムが鳴った。アルディ家からも遠くないこのホテルにすぐにシャルルは現れると明らかに狭いと文句を言いながら入ってきた。
部屋を変えようと言い出したが断った。
マリナが隣にいるし、困ったら来るように言ってある。オレが居なかったら不安になるに違いない。シャルルも諦めたようでソファへ座る。

「聞かせてもらおうか?オレを呼び付けておいて教えないつもりじゃあるまい。
マリナと婚前旅行のつもりかっ?!」

シャルルは挑戦的な鋭い瞳でオレの応えを待っていた。それが気になってホテルまでシャルルが来たのは明らかだった。
フランスの誇る天才シャルル・ドゥ・アルディを呼び付けてホテルに来させるオレもオレだけど。

「まんがの取材にパリに来なきゃいけなくて困っていたマリナにオレは通訳と案内役に選ばれたってわけ。お前が心配するような事は…まだないよ。」

わざと間をあけて言って含みを持たせた。だけどホッとした表情を浮かべるシャルルを見て複雑な気持ちになった。
しかし久々の再会に素直に喜んだ。
シャルルもまた、足を運んでまで再会するに値する親友との夜を楽しもうとしていた。

オレたちは朝まで飲み明かし、マリナとの約束のロビーでシャルルとオレは分かれる予定だった。シャルルがマリナの顔だけでも見たかったんだろうな。
しかし、いつまで経っても現れないマリナにオレたちは苛立ち、部屋に迎えに行ってみた。何度チャイムを鳴らしても出てこない。内線も同じだった。さすがに何かあったのかも知れないと焦ったオレたちはフロントに行って事情を話し部屋を開けてもらう事にした。

そこへ昨夜その部屋の女性がフロントメモを受け取って上階へ行ったのではないか、と教えてくれた。
普通はプライベートな話は聞けないとこだが、オレの隣に居るのはアルディ家当主だ。圧力をかけてでもそのメモの部屋を聞き出すのに時間は掛からなかった。5002…かなりのVIPだな。
オレはその時まで響谷の事をすっかり忘れていた。その部屋が響谷の部屋なのはすぐに分かった。それをシャルルに言おうとするよりも早く、奴は駆け出しエレベーターで行ってしまった…。おいっ、ちょっと待てよ!

オレが50階に着く頃には部屋の中に押し入っていく奴の後ろ姿が見えた。オレも急いで後を追って部屋へ入る。
部屋は奥にもあるらしく向こうの部屋から大きな声が聞こえてきた。

「きさまっっ!何者だ!?
マリナ、君もそんな格好でなぜここにいるんだっっ!
オレはいい…。だが和矢がっっ!
まさか…お前は。」

そこで止める。オレが部屋に来たからだ。
響谷は着替えを済ませ出掛ける準備をしているところのようだった。
苛立たし気にシャルルを睨んでいる。

マリナは…肩を露わにし下着姿なのかシーツに包まり驚いて固まっていた。
…これじゃ、シャルルが誤解するのも仕方ないな。

「シャルル、そうじゃないんだ。」
食って掛かりそうな勢いでこちらを振り返るシャルルはかなり興奮していた。そんなに牙を剥かれては嫉妬したくなる。
オレは静かに言った。

「響谷は女だ。お前の考えてるような事にはならない。」

沈黙…そして一言。

「響谷…あの時の…クソ女かっ!」
吐き捨てるようにシャルルが言う。

「レディの部屋にいきなり押し入っておいてそのセリフかっ!謝れっっ!!」

響谷の怒りも合わさって、ひとますオレたちは部屋を後にした。響谷を男だと思い、オレへの裏切りに奴は怒った。
自分の事は置いておいて。
「オレはいい。だが…」
あの言葉で今回の奴への嫉妬も忘れておくことにしよう。



fin



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薫ファンの方、クソ女なんてシャルルに言わせてしまってごめんなさいっっ!
シャルルの嫉妬から出てしまった暴言ですが、子供の頃の二人のエピソードも思い出しての発言でした(;^_^A