きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

心をこめて18

秋めいてきたパリの朝は少し肌寒く、今日で別邸に行くのも最後かと思うと急に寂しくなる私の胸の中を冷んやりとした風が通り過ぎるようだった。

通い慣れた道を歩き踏みしめるようにゆっくりと別邸へ向かう。
こうやって気軽に別邸へ来ることも本来なら出来ないはずなのよね。

着替えを済ませて最後の仕事に取り掛かっていった。この全てがシャルルに向けられていた事だとは…。ジルは本当にシャルルの事を考えているんだわ。

「なんとか覚えられましたね!」
パトリスさんは胸を撫でおろしていた。
2週間掛けて、私が何も覚えなかったら焦るわよね。最後の3日間なんて必死だったもん。彼がクビになったら私のせいだわっっ!

全ての仕事を終わらせるとミシェルの執務室へ顔を出した。

「やぁマリナちゃん、お疲れさま。
君がドタバタとしていた日々はとても刺激的で楽しませてもらったよ。
またいつでも遊びにおいで。」

最後のいつでも…って言うのは社交辞令なのは私でも分かる。そして私も笑顔で応えた。

「ミシェルにもみなさんにも本当にお世話になったわ。またご馳走になりに来るわね!」

挨拶も一通り済ませ、全ての仕事を終わらせると私は本邸へと戻った。
遠ざかる別邸を何度も振り返りながら、木陰で見えなくなるまでそうしてトボトボと歩いて帰った。
ジルが出迎えてくれた。私は寂しさと達成感と複雑な気持ちでいたけど優しく迎えてくれた。

「マリナさん、お疲れさまでした。よく頑張りましたね。約束の物をお渡ししたいので私室に後ほどお伺いしますね。」

部屋に戻ると疲れがどっと押し寄せてきた。ミシェルとはあまり話も出来なかったし、シャルルとの事を聞く事も出来なかったわ。

コンコンと扉がノックされ、ジルが荷物を持って入ってきた。

「お約束の物をお持ちしました。
シャルルはきっと喜びますよ。マリナさんが一生懸命に働いて贈る物ですもの。」

そう言ってテーブルの上に置いて部屋を後にした。私はテーブルに置かれたそれを手にすると胸にギュっと抱きしめた。自分の力だけで手にしたそれを愛おしむように、大切に抱きしめた…。


昨日の事をシャルルに何て謝ろうと考え始めて私は別邸に行ってた事が話せない事に気が付いたの。
当然、ミシェルとクリスタルを飲んでいたのよ。なんて言えるはずもなく…。
私は頭を抱えてしまった。
だって謝りたいのに謝れないじゃないっっ!!
困り果てた私はとりあえず寝ることにした。きっと起きたら何か思い付くはずよ!きっと…。


朝になっても何も思い付く事もなく目が覚めた。
私はメッセージカードに対しての謝罪の言葉も言わないまま、夕方には帰宅するシャルルを待つことになってしまった…。

怖いわ…。ジルが上手く話してくれたとは言っても私は電話さえ掛けなかった。
しかもシャルルが留守にしている間、一度も…。だって忙しかったのよ。
でも何故かは言えないっっ!
どーしようっっ!



つづく