きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

束縛と自由 後半

ガチャッ。

ドアが開くとさっきの男が入ってきた。私に近づき縛られてる腕をぐっと引き上げ私を立たせた。乱暴に押されながらドアを出て通路を挟んだ反対側の部屋へ移動させられた。
部屋の中には椅子とカメラが一台設置されていた。

「………!!」

フランス語を話しながら二人の男も次々と入って来ると部屋にいた男に声を掛ける。
男は立ち尽くす私のロープを苛立たしげに解いていく。ロープが食い込み手首には赤い痕が残っていた。
私は椅子に座らされて再び縛られた。
覆面をした男は私の横に立ちカメラに向かって話しだす。

「15時までに100万Euro用意しろ。受け渡しはまた連絡する。応じなければ危害を加える。以上だ。」

男はナイフをチラつかせると私の首にナイフを食い込ませた。そこからナイフを蛇が這うようにツーっと下へと移動させて行くと赤い線がうっすらと首に付く。少し切られたようでヒリヒリする。

恐怖が襲ってきた。どうしよう…こんな事になるなんてっっ!!








ジルが慌てて執務室へと駆け込んできてオレにメモリーカードを差し出した。
マリナが居なくなって2時間ほど経った頃だった。アルディ家の総力をあげてマリナを探させていた。パリ市警にも要請をしていた矢先だった。
PCから映し出された映像は耐え難いものだった。オレは怒りと焦りで身体が震える。

くそっ!! 身代金目的の誘拐か!
くだらない。マリナの命を金銭でやり取りするなど許せない!

内線をとりジルに概要を説明する。
「1時間以内に100万Euro用意しておいてくれ。マリナが誘拐された。受け渡し方法は不明だ。現金、小切手、振込あらゆる手段に確実に対応できる準備をしておけ」
ジルは驚いていたが早急に手配を済ませ動く準備に入ると言って電話を切った。


オレは関係各所に連絡を入れ、メモリーカードを空軍、警察に提供し監禁場所の特定を急がせた。
オレと居ることでマリナをこんな目に合わせてしまった。
犯人は必ず見つけ出す!

20分程でフランス空軍から居場所の特定が出来たと連絡が入ったが既に引き払った後だと報告を受けた。
やはりそう来たか…。想定内であったがオレを相手に誘拐事件を起こすなどふざけてる。ましてやマリナを誘拐するなんて!


その時オレのPCからアラームが鳴りだした。……!!もしかしてっ?!
急いでPCを開くとマリナがパリ市内から出たアラームだった。
こんな事もあろうかとGPSを内蔵したブレスレットを持たせていたが今回マリナは外して出掛けた。マリナ自身が居場所を探されたくないと思う事があるとまでは考えて無かったために着脱可能なブレスレットにしたのだが甘かったな…。

しかし翻訳ピアスにパリ市内から離れると知らせる警告アラーム機能を加えておいて良かったと思った。このアラームはオレがPCで解除するまで所在を発信し続けるように改良しておいた。
そして現在サン=クルーから発信されていた。



特殊部隊GIGNが突入する直前にオレもサン=クルーについた。本隊に合流すると間もなく突入すると告げられた。オレは何よりマリナの命は守るようにと強く進言した。
程なくして犯人グループは捕まった。たった三人で今回実行に及んだらしい。


古びたアパートの中へ急いで入ると毛布に包まり部屋の隅で小さくなっている彼女を見つけた。
「マリナもう大丈夫だよ」
肩に手を置くとビクッとマリナは震えた。先ほどの事で過剰に反応しているのだろう…。そっと抱きしめる。

「シャルル、ごめんなさい。私、こんな事に巻き込んでしまったわ。」

そう言ったマリナは痛々しく彼女の首の傷を確認した。傷は深くないようだ。

「帰ろう、アルディへ。
マリナ、何も心配いらない。」

屋敷に着くとオレの部屋までマリナを運んだ。
マリナにソファに座るように促した。
目を合わせようとしないな。やはり負い目を感じているのだろうか…。
とにかく安心させてやらなければいけない。

「傷の治療をさせておくれ。痛むかい?」

消毒を首元に薬を塗りガーゼを充てた。鎮痛剤と安定剤を注射するとオレはマリナを見て話し出した。

「君が死んでしまったら…と考えただけで不安でどうしようもなかった。でも君は戻って来てくれた。オレは君が居てくれるだけでいい。君の心に傷を負わせてしまったのはこのオレだ。でも君を手放してやれない。」

目を合わせずにマリナはポツリポツリと話し出す。
「アルディ家を抜け出して拉致されて私ってどうしようもないバカ。合わせる顔がない…。もっと私を責めて怒って追い出してもいいのに。」

オレに話すマリナの姿が見ていて辛かった。

「こんなに君を愛しているのに傷付いた君を責めたりするはずがないだろう。
オレがもっと見てやれてれば君はイヤな思いをする事がなかったんだ。君が笑っていてくれるだけで十分なんだ。」

マリナは溢れ出す涙を静かに頬に伝わせ泣いていた。オレは彼女を胸に抱きしめると、

「勝手な事をしてシャルルにもたくさんの人にも迷惑をかけてしまったわ。こんな私を許してくれるの?抱きしめてくれるの?」

震える声で消えてしまいそうに問う彼女に言った。

「君に触れる事が許されるのなら強く抱きしめ、交わる事を許されるのならば、その唇に愛を与えたい。君は何があってもオレのファム・ファタルなんだよ。」

胸の中で震えるマリナが愛おしくてたまらない。傷つき別れる事も覚悟していたんだろう。そんな事は認めない。
君が安心して眠れるまでいつまでもこうして側にいるよ。



そして……

ブレスレットの着脱はオレが鍵を付けた。これでオレにしか外せないし、外す必要もないだろう!!



fin