きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

リクエスト創作☆心の隙間に 最終編

涙を流す私にシャルルは内ポケットから純白のレースが縁取られているハンカチを取り出して拭ってくれた。
私はあんなにひどいことを言ったのにシャルルの心は温かかった。


「マリナ、君との関係がサラの仕事に影響を与えたかもしれないが離職理由はそれではないんだ。」

サラは嫌がらせに耐えられなくて辞める訳じゃないの?








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マリナは今回の事で何度も自由でありたいとオレに訴えていた。それは監視、管理といった言葉を拒絶する形でオレにぶつけてきた。
オレの考える保護とはマリナにとってはただの束縛でしかなかった。

マリナがサラを気に入った事を知り、サラの身辺調査を極秘で行った。
マリナは自覚していないだろうがオレと生きていくというのは、こういう事だ。
自分の側に置く人間を選ばなければならない。これはアルディ家に関わる者の義務でもある。
アルディを名乗る者全てがそうでなければいけない上にマリナはオレの婚約者だ。
そしてサラ自身の調査結果は問題なかった。しかし婚約者であるジョンに残念ながら問題があった。
マリナを監禁しオレを脅迫する計画を友人と企てている事が分かった。

オレはサラの家に行く事を反対した。だが犯罪計画があることはマリナには伏せておいた。
話せば彼女を傷付ける事になる。自分がサラと関わった事でジョンが犯行計画を立てたと考えるはずだ。
きっとジョンは今回の話がなければ脅迫などと考えなかったかもしれない。


だがマリナはオレの言葉を無視して出掛けていった。
外出したと執事から報告を受けた時は背筋が凍る思いだった。
オレは急いでサラのアパルトマンへ向かった。マリナを危険に晒した自分の甘さと勝手な行動をしたマリナに怒りを覚えた。

ジョンはアルディ家に勤めるサラから聞いた情報を頼りに計画を企てアルディ家を脅迫する気でいた。
まさにマリナが遊びに行く事は彼らにとって千載一遇のチャンスだったはずだ。
あの日サラはジョンの犯罪計画に自分が利用されマリナを危険な目に合わせた事を知った。
これがサラの離職理由だった。


今回のことでマリナがアルディ家の人間として生きていく事を躊躇うのではないか…。
オレは恐れていた。
アルディ家という特殊な環境に耐えられずにオレとの未来をマリナは放棄するのではないかと不安で押し潰されそうになっていた。
そしてついに昨夜、マリナはオレとやっていく自信がないと口にした。
その瞬間、オレの心は打ち砕かれたようだった。
オレがやっと出した言葉は《そうか…。》だけだった。


マリナにサラの離職理由をオレは説明していく。マリナの負担にならないように細心の注意を払いながら話をした。

「君を利用しようとする人間はこの先も出てくるかもしれない。
アルディ家、そしてオレと関わる以上は避けては通れない。だからこれまで君を屋敷から出せなかった。
今回の事でマリナに不便な思いをさせたくないと思う反面、どうしても保護は必要だと感じた。

マリナ、オレといるのは窮屈か?
オレといる事で君に負担は掛けたくない。日本に…帰りたいか?」



オレはマリナの審判の時を静かに待つ。
涙を流し俯いていたマリナをじっと見つめる。マリナから自由を奪う事も出来る。しかし彼女らしく居てもらいたい。
何よりも大切に思う人の選択にオレの未来を託した。




「シャルルと生きて行くと決めた時に覚悟した事があるの。自由の放棄よ。」



マリナの笑顔に驚かされる。
放棄?…それはマリナがマリナでなくなると言うことか?
オレの驚いた顔を見て慌てて補足していく。


「だからって籠の中の鳥になるって意味じゃないのよ。今までのように好き勝手に出来なくなる立場に自分がなることを忘れないって意味よ。
それを…私は忘れていたの。
サラとの事であんたを疑ったりもした。
私の全てを管理される事に息が詰まりそうだった。でもね、管理なんかじゃなかったのね。私を守るため…。そんな事とは知らずに勝手な事をして心配かけて本当にごめんなさい。私はあんたの気持ちも考えずに自分の事ばかりだった。それに…」

マリナは言葉を詰まらせていた。
声が震え、手で口を覆っている。

「うぐ…っ…ぅ…」

声にならない声で泣くマリナをオレは抱き寄せた。

「それにシャルルとやっていく自信がないと思いながら悲しくて仕方なかった。
あんたは《そうか…》としか言わなかった。あんたはそれでいいの?終わりにするの?って思って寂しくなった。」

マリナ、君に打ち砕かれた心が今、救われていく。心の隙間を埋めていくように強くマリナを抱きしめた。

「オレにとって何よりも大切なのはマリナなんだ。君が求める自由とオレと歩む人生は相反するものかもしれない。
それでもオレの隣で笑ってて欲しい。
ずっと側にいてくれないか?」

マリナはオレの胸の中でコクンと頷いた。小さな体でオレを抱きしめてくれる。


心の隙間に優しい風がふわりと通っていく。2人の隙間はこうして必ず埋める事が出来る。







fin


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最後まで読んで下さってありがとうございます延長しましたが無事に最終話で収まりました(笑)
今回の話は10000HIT感謝リクエスト創作として書きました。

「痴話喧嘩…からの~」をリクエスト頂きました前編あたりがたぶん痴話喧嘩のレベルですかね(-。-;
本格的な危機を迎えそうになってしまいました

「心の隙間に…」を書いている時に頭の中でずっと流れていた曲がありました。
同年代の方がいたら分かるかな

また何か妄想が形になったら更新したいと思います