私はとにかくメイド服ばかりのクローゼットから深紅の膝上丈の半袖ワンピースとレースを施した白のエプロンを着た。
まさにメイド!!恥ずかしいわっっ!
ずっと部屋に居るわけにもいかないので言われた通りに電話を掛けた。
部屋で待っているとカーラさんが迎えにきてくれた。案内されるままに付いて行くと大きな扉の前で止まり彼女はノックをして「お連れしました。」と言うと下がって行った。「どうぞ」と中から聞こえてきて私は扉を開けて中へ入る。
そこには大きな執務机の向こう側、ゆったりとした黒の椅子に座って両肘を机につき、両手を顎のしたで組んでこちらを見ている青灰色の瞳、くせのない白金の髪。
「シャルル…?」
朝、出かけたんじゃなかったっけ??
「やぁ、久しぶりだねマリナちゃん。」
バリトン…?
「あんた、ミシェルっっっ?」
な、な、なんでここにいるのよぉ?
「シャルルから何も聞いてないの?
オレはマルグリット島から兄上様に呼び寄せられて今は補佐をしながら、ここで暮らしているんだよ。」
私は双子がそんな良好な関係になっていたとは考えもしなかった。
ミシェルはマルグリット島へ幽閉されたままだと思っていたし、その、あの頃のままお互いに憎しみ合っているんだと思っていたから、敢えてシャルルに聞く事もしなかった。
「マルグリット島の生活は平和でね、暇つぶしにシャルルの提案に乗ったのさ。オレはどっちにしても当主資格喪失者だからもう争う事も、その必要もないしね」
って事はこの別邸の主ってミシェル!
私はミシェルのお世話をするのっっ?
「さて、マリナちゃん再会の喜びと驚きはこの位にして時間がなくなる。本題に入るよ。」
そう言うとミシェルは私にソファに座るように促し、自身も向かい側に腰を下ろしてメイドとしての仕事の概要を説明し始めた。
「君は今日からこの別邸、つまりオレの屋敷でメイドとして働いてもらう。
君の仕事は三つ。それで報酬は君の望むものとする。出来なければこの話は無効だ。いいね?」
ミシェルが言う三つの仕事って言うのが、掃除や片付け、庭掃除とかじゃなかったのよ。私の想像していたものと違ってて正直、戸惑った。
まず1つ目が屋敷に飾る花を毎日全て生ける事。
2つ目は10時と15時の2回、ミシェルにお茶を用意する事。
3つ目がアルディ家の歴史を学ぶこと。
この3つ目は、館の主に直接関わる使用人はまず、自分達が使える主の事を学び、心からの忠誠を誓い、敬愛しお仕えするんだって。
私はアルディ家の使用人達がカリカリ勉強してるんだって思うと同情してしまった。
私だって少しは知ってるわよ!アルディ家の人って薔薇から生まれたんだったわよね。たしか…。これじゃダメかしら?!