きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

心をこめて3

いよいよその日が来た。
朝が苦手なシャルルも今朝は早くから支度をしていた。私はしばらく会えなくなってしまうシャルルの見送りの為に居室へと向かった。中へ入るとダークグレーのスーツに身を包んだシャルルが長い足を組んでソファに腰掛けて学会の資料らしき物に目を通していた。
私に気付くとフワッと天使のように輝き立つ微笑みを浮かべて立ち上がると私へと近づいて来る。
そっと抱き寄せ優しくキスをする。

「しばらく会えないが、いい子にしているんだよ。オレがいない間の事はジルに頼んである。」
そう言って私の腰を抱き寄せると再びキスを落とす。深く口付け、これからの会えない時間を埋めるかのように長く長く重ねた。


シャルルを見送るとジルが近づいてきて、では行きましょうか?と切り出す。

「まずはそのブレスレットなんですが、GPSが付いてますので別邸へ行く前に毎回お部屋に置いてきてもらえますか?
本邸内でしたら何処にいても反応は同じですが、本邸を出ると発信が変わるタイプなのでシャルルに分かってしまいます。」


さすが。細かい事まで計算済みね。
ジルが味方で良かったわ。


別邸まではかなり歩いた。同じ敷地内にあるのにどれだけ歩くのよ!足が棒になるじゃない!とブツブツと文句を言ってるとジルが申し訳なさそうに「車で移動も出来るんですが、目立つのは避けたいと思い歩いて頂きました。」と言うので私は手で口を押さえた。わがままいってごめんね。


しばらく歩くと建物が見えてきた。
別邸と言ってもかなり立派? ここもお城のようだわ。アルディ家ってどうなってるの? でもこれだけじゃなくて別邸は他にもまだいくつかあるんだって。

正面玄関には中年女性と男性が待っていて私たちを出迎える。男性の方はここの使用人長のジョエルさん。女性がカーラさん。この二人だけは私がシャルルの婚約者である事を知らされていて何かと面倒を見てくれるんだって。
ここには朝食を済ませたら来て夕食に間に合う時間まで仕事をして本邸には毎日帰るってのをシャルルが帰国する前日までする事になっていた。約2週間のバイト代で私が手に入れたい物が買えるとジルに教えてもらってた。

今日から私の初メイドの仕事が始まるんだわ。ジルとはここで別れ私は別邸の玄関へ入り長い廊下を進み一番奥の部屋へ入るように促される。

「こちらで制服に着替えて下さいませ。制服はクローゼットに用意してあります。この部屋は別邸へお越しの際、自由にご利用下さいませ。準備が完了したら内線電話でお知らせ下さいませ。」

二人は深々と一礼すると何処かへ行ってしまった。私は案内された部屋へ入ると驚いた。メイドが使う控え室とは思えない豪華な部屋だった。壁に掛かった絵画や調度品の数々。床一面に敷き詰められた毛足の長い絨毯。クローゼットには洋服がたくさん用意されていた。全部メイド服ってのが可笑しかった。極め付けは隣の部屋に続く扉を開けるとピンクを基調とした天蓋付きのダブルベット。

これは…明らかに要人の為の部屋じゃないっっ?目立つからって本邸から車に乗らずに歩いたのよね…?
この部屋を出入りしてたら怪しまれるんじゃないのー?

ジルー! あんた、ただ歩きたかっただけだったの?
いやっ、私に歩かせたかったのね!
どう言うことなのぉー!