きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

夢の果てに 15

執務机に置かれた一冊の本を手にした瞬間、オレは目を見張った。
その後のマリナの動向が気にかかり、調べさせていたんだが。

「少女漫画からこちらへジャンル変えをしたようですね。しかもここに出てくる天才シャール、人気らしく売れ行きも好調のようですよ」

ジルがオレを見てくすりと笑った。
まさかマリナがオレをモデルにこういう物を描いていたとはな。

「オレは男には興味ない」

「知っています」

咳払いを一つしてジルは答えた。
失恋の痛みを癒すためにしていた行動を責めているのだろう。
虚しいだけだった。
二度と行くこともないだろう。

「平穏に暮らしているならそれでいい」

話の雲行きが怪しくなり始めた所でオレは早々に話を切り上げた。

「そのことですが、一つ気がかりなことが」

ジルの表情が一瞬にして曇った。

「何だ?」

「それがマリナさんと出版社が肖像権侵害で訴えられているようなんです」

「オレは何もしていないが」

「おそらくシャルルの相手役の方だと思います。やはりシャルルと同じく実在する人物で、その……」

ジルは言いにくそうに言葉を濁した。

「隠さず全て話せ」

「わかりました」

あらかた話を聞いた所でオレは立ち上がった。

「どうするのですか?」

「明日、日本へ発つ。この手の案件を熟せる人材を数名と、それから君も来てくれ」

**

日本へ着いたオレ達は訴えを起こしたという管轄の裁判所から男の情報を密かに入手し、そこから男が詐欺グループの一員であることを調べ上げた。
さすがはジルを始めとした優秀な人材を同行させただけのことはあった。
2日と経たずにアジトを特定し、証拠となる盗聴テープも回収した。
そのテープを聞くうちにオレは戦線から早々に離脱した。
マリナが男と暮らす様子を聞いていられるはずがない。
オレの代わりにすべてを聞き終えたジルから事の真相を聞いた。

「訴えは取り下げさせたましたが、もう一つ、大事な物を取り戻さなければいけませんね」

ジルは何やら楽しげにそう言った。
確かにマリナの大切な金は取り返さなければならない。
50万と言えどもマリナが懸命に働いた結果得たものだ。高久のような男が簡単に手にしていいはずがない。

「明日、高久の元へ行き、回収する。あとはそれをマリナに渡してパリへ帰ろう」

無理やりスケジュールを空けて来たからあまりゆっくりもしていられない。

「大事なもの、もう一つはご自身の耳で回収してきて下さい」

ジルの意味深な言葉にオレはハッとした。

「何を聞いた?」

盗聴テープに何か入っていたのか?

「私から話したのでは楽しみがなくなってしまいますわ」

そう言い残してジルは自身の部屋へ帰っていった。
盗聴テープは証拠として提出してしまってもう聞くことはできない。
ジルのあの様子からするとどうやら話す気はないらしいしな。
仕方ない、直接確かめるしかないか。
その日、オレは眠れない夜を過ごした。

 


つづく