きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

碧色のバカンス9

マクソンは遺跡のガイドをしているとマリナは言っていたが、この島にあるのはマテカ遺跡だけだ。
だがあそこは確か……。
半年前に行方不明になったというマクソンの父ジャン・バロン。海に転落、または波にさらわれたという話だが泳ぎが苦手な父が海に近づいたとは考えにくいとマクソンは言っていた。ならばジャンは一体どこへいってしまったのだろう。
いや、半年も姿を見せないということはやはり生存の可能性は低い。
当時、捜索は行われたと言っていたが結局ジャン・バロンは発見されることはなかった。今もあの海で眠っているのだろうか。

「だったらあたしも一緒に行くわ。ホテルであんたの帰りを待っているだけなんてつまらないもん」

ここでの滞在はあと2日。あまり時間はない。マリナのためにサンペドロまで来たんだがバカンスらしいことはまだ何もしてやれていない。
さてどうするか。

「食事はいいのか?」

遺跡までは車で1時間ほどだ。ジャンの件は今日中に片付けてしまいたい。
小切手の代わりにとマクソンはオレにジャンの再捜索を海上保安省に掛け合うことだった。
これは電話一本で片付く話だ。
だが半年もたっている。たとえ再捜索を行なったとしても実際に発見するのは難しいだろう。第一、海流に流されているとなれば捜索範囲はかなり広い。
ただマクソンはオレに再捜索の依頼をしてほしいと言っただけだ。実際に見つかるかどうかは知ったことではない。
しかしジャンが行方不明になった時期がどうも気になる。オレはそのことに興味がある、ただそれだけだった。
だからマリナが食事をし、体を休ませている間に済ませて来ようと思ったんだが、一緒に行くとなるとマリナの食事が済むのを待たなければならない。
やはり海上保安省に連絡するだけで終わらせるべきか。

「それならあそこに何か売っているかもしれない。ちょっと見てくるわ。あんたが遺跡で調べ物をしている間に食べるから大丈夫よ」

とマリナはフロントの向こうに見える売店を指差した。
旅先でそれはないだろう。
仕方ない。ここへ来てからろくに楽しませてやれていないからな。せっかくなら連れて行って遺跡でも見せてやるか。古代遺跡のロマンがマリナに伝わるかどうかは不明だが。

「あれは売店だ。土産品しかないだろ。厨房に用意させるから少し待っていろ」

「用意させるって、ここはアルディ家のお屋敷じゃないのよ。第一あたしを追い出したって謝罪の一つもなかったんでしょ?あんたが言ったって無駄よ」

謝罪か……。
あれはマリナに英会話をさせるきっかけになると思い、あのフロントマンに表情に出すなと言っただけのことだ。
追い出したのがマリナだと知った時の彼は自身の進退を案じ、危機的な状況に陥っていたはずだ。その証拠に交感神経の強い働きによって瞳孔は開き、心拍数も上がっていた。

「似たようなものだ」

そう言い残しオレはフロントに向かった。数分後、丁寧に梱包された料理を手にマリナの元に戻ると彼女は驚いた顔をした。

「あんた一体何したのよ?!」

「ここはアルディのグループ会社のホテルだからね。つまりオレはここのオーナーってわけさ。これぐらい造作もない」

「それじゃ、あのフロントマンは……」

なぜ謝罪しなかったと言いたいのだろう。

「彼に非はない。全てマクソンが仕掛けたことだ。それに君の語学力のなさが招いたことだ。パリに戻ったら徹底的に叩き込むぞ」

「嘘でしょーー?!」



つづく