きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

夢の果てに 13

 

マンションの近くをぶらぶらと歩いてみることにした。駅を挟んだこっち側はあまり来たことがなかったから新鮮だった。
向こう側は商店街もあって下町って感じだったけどこっちはビルやマンションが立ち並ぶ近代的な感じだわ。
たまたま見つけたコンビニでお茶とおにぎりを買った。シャルルに貰った50万円はあるけど、これからあたしはどうやって暮らしていこうかと漠然とした不安を抱えながらとぼとぼとマンションに戻った。
メモに書かれた部屋は306号室。
エレベーターに乗ると12階までのボタンがあった。思った通りかなり大きなマンションだった。
家賃とか支払いとか本当にどうすればいいんだろう。早めにバイトを見つけてここを出ないと破産するわ。
シャルルの生活水準からしたらこれでも妥協してるんだろうけど、もはやペントハウスじゃなかっただけマシだと思うしかないわね。
エレベーターホールには絨毯が敷き詰められ、まるでホテルのようだった。
エレベーターを降りると三つ目があたしの部屋だった。
驚いたのはそれぞれの部屋の玄関が斜めに角度がついていてドアを開けた時でもお向かいさんともお隣さんとも視線が合わない作りになっていた。
いよいよもってこりゃ家賃が高そうだわ。
シャルルに渡された鍵をバックから取り出してみた。
大きさの割にすごい重量感がある。
よくよく見れば、先がギザギザのよくある鍵じゃなくて、大きさの異なる凹みがいくつか付いた見たこともないような鍵だった。鍵だけでも高そうだわ。
せめて部屋の中は狭いことを願うしかない。
祈るような思いで鍵を開けてみると、予想した通り、ピカピカの人工大理石のタイルの床があたしを出迎えてくれた。
だめだ……めまいを起こしそうだわ。
半ば諦めながら部屋の奥へと進んで行くと広めのリビングにソファとテーブルが置かれていた。片隅には申し訳なさそうにあたしの荷物が置かれていた。ここじゃ、こたつは似合わそうねとぼんやりと部屋を見渡した。
奥に扉が一つ。
とりあえずあっちを寝室にしようかな。
カチャっと扉を開けると一人で寝るには余るほどに大きなベッドが置かれていた。
シャルル、買ってくれたんだ。
でもこれは引越しする時に処分するようになるわね。だってこんなに大きなベットが置ける部屋なんて借りられないもの。
リビングに戻ってさっきコンビニで買ったおにぎりを食べることにした。
今日はいろんな事がありすぎて疲れちゃった。今夜はお風呂には入らずにこのまま寝ちゃおう。それで明日はとにかくバイトとアパートを探しに行こう。
あ、そうだ!
ここの管理会社の連絡先も調べて家賃の事とかも聞かなきゃ。そういえば引越し業者の人が管理人に鍵を開けてもらうって言ってたわ。その管理人に聞けばわかるはずだわ。これを食べたらちょっと行ってみよう。
コンビニの袋からおにぎりを出してピリピリっとビニールを開けた瞬間、ガチャっと玄関の方で音がした。
何っ?!
慌てて振り返ると、ゆっくりと玄関のドアが開いた。
誰よ?人の家に勝手に入って来るなんて怖いからやめてちょうだい。
あたしは手にしていたおにぎりもそっちのけにリビングの隅に慌てて身を潜めた。
もしかしてさっきの引越しの人?!
でもスペアキーは預からないって言ってたのにどうして?!
コツコツっと中に入って来た音がした。
やだ、どうしよう。
もうあたしは心臓がバクバク。
ガチャっとドアが閉まり、そいつは律儀にもドアガードまでしっかりとした。
その時あたしはとっさに考えた。
相手がリビングに入って来た瞬間に大声を上げて、そいつが驚いた隙に逃げ出そう。
ゆっくりと足音が近づいてきた。
さっ、今だわ!

「曲者っ!!……って、シャルル?」

あたしは息が止まるかと思った。

 


つづく