きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛は記憶の中へ 18

「何をしているんだ?!マリナを離せっ!」

聞き覚えのあるその声に顔をあげるとアーモンド色の長い髪を揺らして駆け寄ってくる懐かしい姿が目に飛び込んできた。

「カ、カークっっ!?」

「あいつもお前の仲間か?!」

すかさず左側の男があたしの手を投げるように離すと、ものすごい勢いでカークに向かっていった。

「お前はそのままじっとしているんだぞ。あの黒柴って男は血の気が多くてね。こんな場所でもし、騒動でも起こせばお前の仲間も確実に警察行きだな。黒柴の場合は警備のために必要な武力行使だと言えば済むだけの話だからな」

どうしよう……。
どんどん話が大きくなっていく。
黒柴って男はカークの前に立ちはだかると、「やるのか?来いよ」と手招きの仕草をしながら挑発的な言葉を口にする。
次の瞬間、カークの右手がジャケットの内ポケットへとサッと延びた。
その動きにはひとつも無駄がなく、しなやかで野性的だった。
え?でも……!
まさかこんな所で撃ったりしないよね?
ちょっと煽られたぐらいで熱くなるほどカークって短気だったっけ?
そういや前にシャルルにぺっぺってしたことがあったわ。たしかあの時はシャルルに田舎者の出稼ぎとかなんとか言われてバカにされてやったんだっけ?
だめだ。止めなきゃ。

「ちょ、ちょっとカーク。いくらなんでもそれはやりすぎなんじ……」

するとカークの右手には深黒の本革製のそれが握られていた。カークは黒柴の目の前でそれをゆっくり開いて、強い光をその目に宿した。

「君は大使館の警備員か?私は国家司法警察総局警視カーク・フランシス・ルーカスだ。大使との特殊警備プラスの打ち合わせを終えた所で、オレの知人がトラブルに巻き込まれているようなので駆けつけた次第だ。彼女を拘束した理由を教えてくれ」

カークが手にしていたのはなんと警察手帳だった。しかも偉くなってる?!

「警察総局の人間か。だが、ここは日本国大使館だ。残念ながらフランス国家権力は及びません。ルーカス警視」

黒柴はニタリとイヤらしく笑ってみせた。

「もちろん、日本国であることは承知している。だから自身の身分を伝えた上で頼んでいる。それにできればこのまま彼女を引き渡してくれないか」

あくまでもカークは落ち着いた様子で話している。あたしをどうにか穏便に救い出そうとしてくれてるのが伝わってくる。

「引き渡してほしい?そんなことできるはずないだろ?この女は館内で騒ぎを起こした。よってこれから処分が確定するまでの間、警備局によって身柄を拘束されることになる」

あたしを拘束している男がきっぱりと言った。

「拘束に至った経緯は何だ?おい、強権発動する気か?!」

カークは焦った様子であたしに駆け寄ろうとして黒柴に止められる。
やっぱりあたしはこのままどこかに連れていかれちゃうの?

 

 


つづく