きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の証50000hit感謝創作4


テントに向かって歩いていると隣を歩いていたマリナが突然、歩くペースを落とした。
振り返るとマリナは何かに気を取られたように遠くを見ていた。
今度はどんな出店を見つけたのだろうと呆れながらマリナの視線の先を辿った。直後、オレは息を飲んだ。
普段と変わらぬ日常を送る人々とプラージュを楽しむ人々との見えない境界線のその先、人波に紛れて見え隠れしている
ものの、その後ろ姿をオレが見間違えるはずがない。
それは懐かしい友の姿だった。
オレがマリナと出会う前から互いに惹かれ合いながらも素直になれずにいた二人。そんな二人をオレはずっと近くで見てきた。小菅で二人を再会させた時と同じ痛みがオレの中で生まれた。

小菅で別れてから二年、マリナは突然オレの目の前に現れた。


「あんたに会いたくて来ちゃった」


そう言ってマリナが突然やって来たのはつい二ヶ月前の事だった。和矢とはあれから半年ほどで別れたと言っていたが二人の間に何があったのかは知らない。
いつかこんな日が来るのではないかとは思っていたがまさかこんなに早く来るとは……。
オレの視線に気づいたマリナがハッとしたように慌てて視線を逸らした。
和矢を見つめていた事を隠そうとするマリナの態度に苛立ちを覚えた。


「どうした?」


「ううん、別に。行こう、シャルル」


マリナは目も合わせずにそう答えると再び歩き出した。何もないなら和矢が居たと言えば済むことだ。それなのに何も言わないのはなぜだ?
オレに気を使っての事なのか、それともまだあいつに心残りがあるとでも言うのか。

それからテントへ戻るまで二人の間に会話はなかった。マリナが今、何を思っているのかオレはそればかりが気になっていた。


テントに戻るとマリナは手に持っていたファラフェルとガレットをテーブルに並べると何もなかったかのように食べ始めた。
このままオレは気付かないふりをするべきなのか、それとも聞くべきなのか。


「シャルル黙っちゃってどうかしたの?少し食べる?」


マリナはプラスチック製の容器に入ったファラフェルをオレに差し出した。
すっかりいつものマリナだった。このまま見なかった事にしてしまおうか。
だが、せっかくのマリナとのバカンスをモヤモヤした気分のまま過ごしたくはない。



「オレはいいから全部たべていいよ。それよりさっきは何を見ていたんだ?」


「さっきって?」


マリナはファラフェルを一つ口に放り込むとペロッと指を舐めた。オレはハンカチを取り出し、指を舐めるなと言わんばかりにマリナに手渡した。マリナは恥ずかしそうにハンカチを受け取ると慌てて指を拭いた。


「ここへ戻る途中で何かを見ていただろう?」


ここまではっきりと言えばマリナもとぼけられないだろう。


「あ、人がいっぱいだなって見てただけよ。セーヌ川の方は普通に生活している人が歩いているのにすぐ目の前をバカンスしている人がいるって奇妙だなって思ってね」


人は何かを隠そうとする時、左脳で創り上げた妄想の世界を語ろうとするため視線が左に向く。今のマリナがまさにそれだった。


「そうか……。たしかにパリ市内でのバカンスは現実との境が曖昧すぎるからね」


あくまでもシラを切るつもりなら仕方がない。




つづく
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みなさん、こんにちは!
だいぶ遅くなってしまいました💦次話も少しお時間をいただきます。九月いっぱいでアプリが終了してしまうのでそれまでには完結したいと思います。