「シャルル!すごーいっっ!奥にウッドデッキまであるよ!ねぇ早く出店を見に行こう」
オレの手をすり抜けてマリナは駆け出す。ついさっき離れるなと言ったばかりなのにもうマリナは聞いてない。無邪気にバカンスを楽しむ姿を少し憎らしく思いながら後を追うように歩き出した。
「マリナ、一人で先に行っても買えないぞ」
「だからー!シャルルも早くっっ!」
マリナは立ち止まりオレを手招きする。
オレを求めるその仕草は何とも心地よく、憎らしさも忘れてオレは彼女の元へと急いだ。
いくつかの店を見て歩き、どれにしようか悩むマリナを微笑ましく見ながらオレはマリナがそばにいてくれる幸せを噛み締めていた。
「ねぇ、これ、かき氷だよね?」
一つの店の前でマリナは立ち止まった。
「グラニータだよ。イタリアのかき氷ってとこかな」
「じゃ、これのイチゴ味がいい」
出だしから甘いものにいくのか……。オレは思わずため息をつきながらも店主に注文した。
「Un gout de fraise s'il vous plait」(イチゴ味を一つ)
「Bonjour monsieur.S'il vousplait
attende」(お待ち下さい)
「Ce bien?」(いくらだ?)
「Elle 5 euros」(5ユーロです)
店主から受け取ったグラニータをマリナに手渡した。
「ほら、マリナ」
「あ、うん、ありがとう」
何だかマリナの様子がおかしい。
まさか、一つでは足りなかったのか?
「どうした?一つじゃ不満かい?」
マリナは慌てて首を振った。
「ううん、そうじゃなくて。フランス語で話すシャルルってカッコいいなって思って」
マリナは『どストライク』を放つだけ放つと自分の言葉に何の責任も持たずにグラニータをほおばり始めた。
「冷たーっっ!頭がキーンってなって痛ったーい」
無邪気に食べる姿はまるで幼女のようだがその口元にオレは釘付けになる。
グラニータを持つマリナの手を引き寄せ、その唇に口づけるとマリナは慌ててオレの胸を叩いた。
「ちょっと、シャルル!こんなところで何するのよ!」
マリナは真っ赤になってオレに抗議をする。
「オレを煽った君が悪い。それに周りを見てごらんよ」
ここはパリだ。あちらこちらで恋人たちが愛を語り、口づけを交わしている。そしてこの会場はバカンスを楽しんでいるパリっ子ばかりだ。水着姿で体を寄せ合い二人の世界を作り出している。
辺りを見渡していたマリナが目のやり場に困っているのがまた可愛らしい。
「今夜はフランス語で君を愛する事に決めたから覚悟しておいて」
「ちょ、ちょっとシャルル!何言ってんのよ!」
屋敷の中で二人で過ごしている時には感じなかった開放感にオレは満足していた。
手に持ちきれない程の食べ物を抱えて歩くマリナ。今日だけは好きに食べさせてやろう、そんな事を思っていられたのもテントに戻るまでだった。
つづく
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みなさん、こんにちは!
長かった夏休みも終わりましたね~。お子ちゃま達が幼稚園や学校へ行き始めてやっと平穏が戻った!という方も多いですよねまた土日だけど
さて今話の中で出てきたフランス語はアクサン記号が文字化けしてしまうためにアルファベットのみの表記になってますのでご了承ください
長かった夏休みも終わりましたね~。お子ちゃま達が幼稚園や学校へ行き始めてやっと平穏が戻った!という方も多いですよねまた土日だけど
さて今話の中で出てきたフランス語はアクサン記号が文字化けしてしまうためにアルファベットのみの表記になってますのでご了承ください