きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

忘れられないもの9


オレはそれを受け取り、震える手でそっと開いた。
一枚の紙を折り曲げることで生み出される芸術。動植物や生活道具などの形を作る日本伝統の遊び、その代表とも言えるのがこの折り鶴だ。
この幾何学的な造形物を展開していくにつれ、見え隠れする日本語の文字。
逸る気持ちを抑えながら壊してしまわぬように丁寧に広げた。

「シャルルが早く元気になって当主に戻れますように。シャルルの良い所をたくさん見つけてもっとシャルルを好きになれますように」


オレは軽い眩暈を覚えた。
ある程度の予想はしていたがここまでとはな。アデリーヌがそばに居ることも忘れてオレは立ち尽くしていた。
もう何年も味わっていない人の好意に触れたような気がしていた。

【オレがオレらしいところをたくさん君に見せたら君はオレに恋する?】


あの時オレが口にした言葉をマリナは確かに受け取っていた。
オレが眠っている間にマリナは一人、部屋でこれを作っていたのか。
その時、窓からそっと風が舞い込んだ。
懐かしい香りがした。

「マリナ……」

彼女の名を口にしたのは何年ぶりだろうか。閉じ込めていた想いが溢れ出し、胸が苦しくなる。
愛していたからこそ手放したオレのファムファタル
だが、もう過ぎたことだ。
夢にまで見たマリナとの未来。
それも儚く消え、夢でさえ会うことがなくなってからどれくらい経ったのだろうか。

「マリウスったらそれを見つけてから何かある度に願い事を書いて折り鶴を作るようになったのよ。うちにはそれと同じ物がいくつもあるわ。
だからそれはあなたにあげる」




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迎えの車に乗り込み、流れていく景色の何を見るわけでもなくオレの意識は内ポケットに納めた折り鶴に向けられていた。
目を閉じるとあの頃のマリナの姿がまざまざと浮かんでくる。
笑った顔、怒った顔、悲しげな顔、泣き顔…懐かしさと愛おしさで胸が熱くなる。
「今さらどうしようというんだ…」


車のシートに体をあずけ、オレはそっと目を閉じた。







つづく


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みなさんこんばんは!
折り鶴の中は~?!ってとこからだいぶ経ってしまいました
このところペースダウンが著しいです。
それはなぜか…。
もちろん書けない。が一番だけど秋に行われるフランス語検定に向けてテキストを買ったからなんです。もちろんまだ買っただけですよ(笑)
なんだか浮かれちゃって



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今朝なんてフランスの男性二人と暮らしている夢を見ましたよ。←なんか勘違いしてます。(≧∇≦)すでにシャルルじゃなくなってるし…
「Il fait chaud 今日は暑いね~」
とか言ってた。実際はこれしか理解してなくて、でも夢の中だから喋ってる風に都合良くなってた(笑)


なので少しだけお時間をいただきます。
また書き溜めてから日本編へ突入していきたいと思います。