きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

la douce pluie 12

私達は別々にお屋敷に入る事にした。
私は館の西側から入りミシェルは北側にある入り口から帰った。

「夜中に堂々と二人で帰るわけに行かないだろう。」

ミシェルの言う通りだわ。
二人で揃って帰ったらさすがに目立ちすぎる。あとでシャルルの耳にでも入ると面倒よね。
私もシャルルに余計な心配を掛けたくはなかった。シャルルの留守中にミシェルと深夜の外出を知ったら大変だわ。
こんな事ならマルクの事も最初にちゃんと話しておけば良かったと今さらながら思ってしまう。

夜も遅いためお屋敷はシーンとしていて
それぞれの出入り口の警備員以外はメイド達の姿もほとんどなかった。私は自分の部屋に急いで戻った。

扉を閉めると安堵からへなへなと床に座り込んだ。
秘密なんて持つもんじゃないわね。
次に何かあったらシャルルに話す事にしよう。反対されるのがイヤだからって秘密にするのはやっぱりダメよね。



寝室にはティナが丸まって眠っていた。
そっとティナの体を撫でると寝返りをうつみたいにして寝る態勢を変えた。
起こしたくなる気持ちを抑えておやすみのキスをした。

「マックスも大変な事にならなくて良かったわ。ティナもまた会いたいでしょ?今度シャルルにお願いしてみようね。」


「何をだい?」


私は飛び上がらんばかりに驚いて振り返るとシャルルが扉の前に立っていた。
壁にもたれ掛かって腕を組み、長い足を交差させてこちらを見ていた。

「シャルルっっ!」

心臓が止まりそうってこういう事を言うんだと思った。
今の聞いてたのよねっ?!
私はこの場を上手くごまかす適当な事を口にした。


「ほら、ティナを買った時に一緒にいた双子ちゃんとまた会わせたいなって思ったのよ。あんたならきっとあの子が何処にいるのか調べられるでしょ?」


私は上手く切り抜けられた事にホッとしていた。チラッとシャルルの様子を伺ってみるけどシャルルは小さく頷くと優しく微笑みかけてくれた。


「あぁ、必要なら調べられるよ。
それこそ何でもね。アルディ家の情報網は国家機密までも掌握できる。」

そう言ったシャルルの瞳を一筋の強い光が走り、私はゾクッとした。
まるで全てを見透かされているような気分になった。
そのままシャルルは私の方へと歩み寄るとその胸に抱き寄せた。その時、シャルルが一瞬ビクッと体を強張らせたように感じたの。


気のせい?

シャルルの逞しい胸の中に強く抱き締められた。あぁ…ここが私の居場所だわ。
私が望む場所はただ一つ。
シャルルの香りに包まれ、その腕に身を委ねた。シャルルの胸に頬を寄せると心地の良い鼓動が私に伝わってくる。
でもらすぐにシャルルは身を屈めて私の額にキスをすると体を離した。
私の背中に回されていた手が肩に置かれ、シャルルの手が順番に私から離れていく。


「おやすみ、マリナ。」

シャルルは振り返る事もなく寝室を後にした。後ろ姿を見送ったまま私はしばらく動けなかった。

あの時のような…



あの後ろ姿のようだった…



シャルルの後ろ姿が忘れられない。






つづく