きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

la douce pluie 9

プルップルッ…

夕食が終わって自分の部屋で私はティナと遊んでいると、引き出しの上に置いた携帯が鳴ったの。
きっとシャルルだわ!
だけど手に取って画面を見ると見知らぬ番号からだった。
私の番号を知っているのはシャルルとミシェルと執事の3人だけ。と言うことはきっと迷惑電話だわ。しばらくすると呼び出し音は止んで私はホッと胸を撫で下ろした。突然の電話にまだ心臓がドキドキしているわ。
私は携帯を元の場所に置いた途端、再び呼び出し音が鳴り出したもんだから驚いた拍子に落としそうになり焦った私は携帯を両手でお手玉のようにして何とか受け止める事ができた。

ああ、落とさなくてよかった!

落として画面が割れでもしたら大変だもの。胸を撫で下ろしていると携帯から声が聞こえてくる…うわっ!落としそうになってどこか触っちゃったんだわっ!
やだっ、出ちゃったんだ。
切らなきゃっ!と思った時、携帯から私を呼ぶ声が聞こえてきたの。

「マリナっ?!マリナっ…?」

この声はマルク…?

電話はマルクからだった。そうか、前にティナの事で私が掛けた事があったから番号を知っていたのね。
マルクは何だか凄い剣幕で話し出した。


「マリナ、さっきから咳が止まらなくてマックスが苦しそうにしているんた。唇の色も徐々に紫色になり始めてるんだけど、こんな時間だから動物病院はどこも閉まってて…お願いだティナの薬を分けてくれないか?
確か咳止め持っていたよね?そっちまでオレが取りに行くから君の住所を教えて欲しいんだ。」

マックスがっ?!
だけど住所って行っても私はここが16区ってことしか知らないわ。
きっとアルディ家って言えば来れるとは思うけど私は迷っていた。
ここにマルクを呼んでしまっていいものかどうか…。

「ねぇマルク、ちょっとだけ待って。すぐに掛け直すから…。」

悩んでる時間はない。私は急いでミシェルの部屋まで走った。

「ドンドンッ!」

ノックするのさえもどかしく思いながら
激しく叩いた。

「誰だ?」

「マリナよ。」


ミシェルは私の訪問に少し戸惑いながらどうした?と言いながら開けてくれた。

「どうしよう、ミシェル。
マックスは苦しんでるみたいなの。でもマルクをアルディ家に呼ぶわけには行かないよね?」

マルクからの電話の内容を話したけどミシェルの反応は冷静だった。


「マリナ、止めておけ。これ以上アイツに深入りしない方がいい。マックスにその薬が合うかも分からず勝手に与えるのもよくない。」

ミシェルはポケットから小さな紙を取り出すと私の前に差し出した。
それは引き出しに入れたおいたはずのマルクのメモだった。

「なんでミシェルが持っているの?」

ミシェルは腕を組み、仕方がないって表情を浮かべて話してくれた。


「君の部屋の掃除をしていたメイドが落ちていたコイツを見つけたんだ。内容が男性の個人情報だろ?
そのまま見過ごす事も出来ずに困ったメイドがシャルルに渡しにきた。オレだとは知らずにね。こんな事がシャルルに知れたら君も面倒だろ?
あの時オレは捨てるように言ったのに聞かなかったんだな?」


捨てるように言われてたのにミシェルにバレてしまった。しかもシャルルにまで分かってしまうとこだったのね。
ミシェルの責めるような口調に私は俯いたまま顔を上げる事が出来なかった。

その時、私の手にしていた携帯が再び鳴り出した。マルクが待ちきれずに掛けてきたんだわ。呼び出し音がマックスの緊迫した状態に思えてきて私は胸が苦しくなった。ここで私が出なかったらマックスはどうなるの?
ティナも遺伝性の咳だった。
きっとマックスも同じはずよ。ティナの薬をあげればきっと良くなるわ。苦しんでいるマックスを放っておけないわ。
私はミシェルが反対するのは分かっていたけど言わずにいられなかった。

「私、ティナと同じ日に生まれたマックスを放ってなんておけない。どこで育つかによって運命が変わってしまうなんて不公平よ。あの時、私がマックスを選んでいたら今頃ティナが苦しんでいたかもしれない。だからあんたに止められてもやっぱり私は薬を届けに行くわ。」


ミシェルは目を閉じたままだった。
忠告も聞かずに出かける私に呆れているんだわ。でも薬を渡すだけ、すぐに帰ってくるわ。それにシャルルは今、外出していていない…。今なら…。



ミシェルは自嘲的にフッと笑うと手を伸ばして私の頭を撫でた。

「仕方ない…オレが一緒に行ってやる。
しかし君は不思議な子だな。
人のために自分を追い詰めるような事までするなんて…。シャルルが戻る前にさっさと済ませよう。」

私はすぐにマルクに電話を掛けて言われた住所までミシェルの運転する車で向かった。



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…オレも同じか。

今夜、アイツは居ない。



同じ日に生まれた運命の分岐を不公平だと言った彼女の言葉にオレの心が再び揺れた…







つづく