きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の祈り…シャルル編7

事故の日から5日が経とうとしていた。
マリナの状態は安定していたが、意識が戻らない。オレは考えられる全ての治療を施しマリナを見守り続けていた。
臓器への損傷は見られなかった。

事故のショックでいつ目覚めるのか、このまま眠ったままになってしまうのか…
オレは最悪の事も考えていた。

それこそ、人類が踏み込んではならない所へ踏み込もうと考え始めていた。
彼女の細胞から彼女を再び作り出す…。
響谷兄弟の時にすでに成功させていた補助人口心臓と大脳及び小脳は問題ないだろう。しかし本人の遺伝情報をそのままに再生させる事にはまだ研究が必要だった。
さすがのオレでもアルディ家当主の仕事をしながら研究をする事は非現実的だった。それこそ時間に限りがなければ両立も出来ただろう。しかし一刻も早く成果を出さなければいけないかもしれない。

ジルに手配し、ミシェルをアルディへ呼び寄せた。
当主代理をしないかと…。オレはどうやって奴を落とすかと考えていたが奴はオレの提案をあっさりと引き受けた。
ミシェルからの条件は、アルディの戸籍への復活。つまりオレの双子の弟と言う立場の復権。問題なくオレは親族会議を招集し、認めさせた。長老達もオレが当主の座を放り出し研究に入られては困るとミシェルの当主代理の話を飲んだ。なんせ奴はオレ以上のIQの持ち主だから双子のどちらがしようが問題なかったのだろう。公にはミシェルの存在は隠され、あくまでもオレとして振舞うことにした。
当主争いの時のような世間の好奇の目にさらされるのも煩わしかった。

数日後、全ての執務の引き継ぎをミシェルとし、ジルとも打ち合わせをした。

およそ1ヶ月間、ミシェルに当主の権限を委任し、オレは研究に入る準備を始めた。

定時になりマリナのICUへと足を運ぶとあちこち包帯で巻かれ痛々しい彼女が眠っていた。一つずつ包帯を取り裂傷部位を消毒する。意識もないため感染症を一番に気を使った。柔らかな頬に生々しい傷がオレの胸を貫く。
なぜ、こんな事になったのか…。

警察の調べではマリナが突然、車の前を無理に横断しようとして、車はハンドルをきって避けたが反対車線で対向車と衝突し、横転。衝突された対向車は制御不能でマリナにあたり彼女を巻き込みながら止まったと聞いた。

車体の下敷きにならなかったおかげで内臓損傷は免れたが頭を強く打ち付けたのは間違いない。

骨折していない方の腕の包帯を解き、ガーゼで綺麗に消毒をする。裂傷はひどく一部骨が白く見えていたが、今は傷も縫合したので、順調に回復するはずだ。
全ての包帯の交換を終えるとマリナの頬にそっと手を差し入れ温もりを確かめる。額にキスをする唇は震えた。

オレは部屋を後にするとアルディ家に作った研究室へ向かい細胞の培養と研究に没頭した。眠る事はほとんどなかった。
眠ることなど必要がなかったからだ。
何よりもマリナを救いたかった。再び茶色い瞳を開けてくれる事を願って…。








つづく