きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の祈り…シャルル編6

私は国立病理研究所へ向かっていた。PCに目を向けていると運転手が申し訳なさそうに声を掛けてきた。


「シャルル様、渋滞しておりまして少々時間がかかりそうでございます。」
「他の道で行け」
私はそれだけ告ると再びPCに視線を落とす。それにしても渋滞とは珍しいな。しばらく走ると片側車線を一台の車が塞ぐ形で止まっていた。車の窓からその様子を眺め事故のせいで己の時間を費やしたのかと知る。現場をゆっくりと通り過ぎようとした瞬間、事故を起こした車の側で横たわる1人の女性の姿が目に入る。

肩にかかる茶色の髪、小さな体、東洋人独特の黄色がかった肌色……。



「まさかっっ!!!」

オレは後部座席の扉をもどかしく思いながら勢いよく開けてその女性に走り寄った。こちらに背中を向けて横たわる女性をそっと上向かせた。

それはちょうど数ヶ月前に身を割かれる思いで手放した運命の人だった。
「マリナーーっっ!マリナ、マリナ…」
突然の事にいつになく気が動転してしまう。オレを狂わせるその人の状態を確認しなければいけなかった。

呼吸はあるが意識はない。
首すじに手を充て脈を測りながら外傷を確認していく。車体との接触でだろうか、手足にいくつかと顔にも裂傷を負っている。傷が残らないようにしてやらなければいけないな。ふと、そんな事を思っていた。
携帯を取り出しジルを呼び出し、アルディ家のICUをすぐに使えるように手配させた。

脳への損傷が気になる。一刻も早く検査をし、現状を把握しなければならなかった。ジャケットを脱ぎ、マリナにそっと掛けると素早く抱き上げ車へ乗り込んだ。

「アルディに戻る!早くしろっ!」
もどかしい。苛立ちがオレを支配する。気持ちばかりが焦った。なぜマリナがパリにいるんだ?!なぜマリナがこんな事になっているんだっ!?



アルディに着くと玄関前に準備させておいた医療チームが待ち構えていた。オレはいくつか検査の指示を出し、自身も一刻も早く着替えるために屋敷の中へ入る。あらゆる可能性をシュミレーションする。何通りもの予見をし、どんな状態であっても救わなければいけないと決意していた。オレが間違えるはずがない。
マリナはオレの手で必ず助ける。

CTおよびMRI検査の結果をジルが持ってきた。オレは素早く目を通した。MRIは時間を要するので先にCTで脳の状態をすぐにでも確認しておきたかった。
高次脳機能障害が心配であったが検査結果を見る限り異常は見られずひとまず安堵する。

「あとは意識が戻れば…。」オレは誰に向けてでもなく言葉にした。


裂傷は痛々しかったが丁寧にコンクリート片を除去し、消毒した後に縫合した。車体と接触した際に地面を引きずられたのだろう。左腕は開放骨折していたので手術をした。折れた骨が外部に飛び出し裂傷を伴ってるため長期の治療を要する事になる。が、これも時が経てば必ず元に戻る。なにしろ執刀したのはこのオレだ。
金属プレートとボルトで補強し、ギブスで角度を固定した。
あとは骨が繋がればボルトを外せばいい。

治療計画はすでに出来上がっていた。
マリナの脳への影響だけが不安を残していた。こういった交通事故の場合、検査だけでは判断が難しく意識が戻るまでは安心出来ない。

マリナ…無事でいてくれ…。
あとは祈るだけだった…。



つづく