きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

束縛と自由 前半

「ちょっと、いつになったら外に出ていいのよっ!!」




パリで暮らすようになって半年も経つのにシャルルの外出の許可が出ないのっっ!! たしかに敷地内だけでも特に困る事は何もなかった。
でも、外の空気を感じたいのよ。外気って意味じゃなくて生きてる事を感じたかった。

豪華なお屋敷で一流ホテルに負けない食事、使用人たちは行き届いたお世話をしてくれるし、贅沢なのは分かるわ。たまにならいいの。でも毎日だと窮屈で私は息が詰まってしまう。
近所のスーパーで買い物する、コンビニへ行く、仕事に行く…いやっ…仕事を貰いに出版社へ行く、日常がなくなって私はパリでの暮らしを持て余していた。

「何度も同じ事は言わせないでくれ。
オレが一緒でない限りはダメだ。」


いつもこれしか言わない。納得できない私は憤然としてシャルルの部屋を出て自分の部屋へと戻った。

彼の心配する気持ちも分かるけど外の世界と繋がりが少しは欲しいわ。そしてアルディ本邸から抜け出してブローニュの森に行ってみようと考えたの。同じ16区にある有名な公園でパリ市民の憩いの場所にもなっていて、パリに来てすぐの頃シャルルに連れて行って貰ったこともあって近くだったから一人で行けるはずよ。

私は小さな肩掛けバックにハンカチとお菓子、それとスケッチブックを入れて部屋をそーっと抜け出した。GPS付きのブレスレットはちゃんと置いて行く。正面玄関は警備が厳しそうだから広い中庭を抜けてぐるっと建物を回って裏の通用口へ回ってみた。
何度も散歩しているからここまでは完璧だわ。
逸る気持ちを抑えて通用口へと近づいたの。警備員はいるけど2人だし、やっぱり正面玄関よりは手薄だわ。

私は至って普通に敷地を出る所だった。あと少し…。そりゃやっぱり聞かれるわよね。
「お嬢ちゃん、ここのお屋敷に御使いかい?気を付けて帰るんだよ。」
ニッコリ微笑むおじさんは私が誰か把握してなかった。私もニッコリと微笑み返し、難なくアルディ邸から抜け出した。

アルディ家の誇るセキュリティシステムも侵入には厳しくても出る事には弱いのかしらね。
敷地を踏み出した一歩は私の心を躍らせる。自分の意思で出掛ける。この普通の事が制限されていたんだもの。とにかくブローニュの森を堪能しに出発したわ。

アルディ家からもブローニュの森は見えていたので迷う事なく辿り着けた。パリ市民の憩いの場だけあって、思い思いに皆が犬と散歩したりスケッチしたり、語り合ったりしていて私は満足感で胸が踊っていた。
動物園や噴水、バガテル庭園もあって1日じゃとても見て回れそうにもなかった。

私は芝生の上にちょこんと座りバックからスケッチブックを出して風景を模写していた。大地の力強さを感じてイライラしていた事も小さな事に感じられる。夢中になって絵を描いていると太陽が黒い雲に隠されて辺りが一瞬暗くなった。
辺りを見渡すと人影が見えなくなっていた。雨が降りそうだからみんな帰ったのね。私も急がなきゃっ!と思ってスケッチブックをバックにしまった時に背後からいきなり羽交い締めにされ、叫ぼうにも口を布で塞がれてしまった。まずいっ!そう思った時には遅かった。

「池田マリナだな? 大人しくするんだ。さぁ来い!」

私は3人組の男達に連れ去られてしまった。…助けて、シャルル…っっ!

公園を抜けると停めてあったバンの後部座席へ押し込まれ車は慌ただしく走り出した。私は、何をしているんだろう…。
涙が出てきて後悔してもしきれないほどだった。唇を噛み締め、血が滲んでいた。
15分ほど走ると小さなアパートへ連れて来られた。私は恐怖から足がガクガクと震えが止まらずに上手く歩けないでいると1人の男が私を担ぎ上げたっっ!
きゃーっっ!持たないでよっっ!

カビ臭い部屋へ入ると両手首を後ろ手にロープで縛られ両足も縛られて完全に動けない。この人達は私を知っていたわよね。つまりシャルルが目的なのね。
私は恐る恐る言葉を出してみた。1人の男がカタコトの日本語が話せるみたいだった。
「何が目的なのよっ?!」

「シャルル・ドゥ・アルディの失脚だ」
それだけそう言うと部屋を出て行こうとしていた男の背に向かって私は叫んだ。

「そんな事、出来るわけないわ!」

男はギィとドアを開けて振り返ると

「Silence!」男は苛立ちながら短く発してドアをバタンッと締めた。翻訳ピアスからは「静かにしろ!」と耳に流れてきた。





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