私はアニーの仕事が終わるのを待って本邸へと送ってもらった。アルコールも入っていたから車でピューンとね。
やっぱり車だと楽ちんね。毎回送迎してくれないかしら?アニーに相談してみたんだけど冷やかな視線が帰ってきた。
「日中は目立つのでダメですよ。」
とあっさり却下されてしまった。
うぅ…何日か一緒にいるよしみでどうにか…と思ったけどダメだった。
遅い時間にも関わらず本邸にはまだメイドの人達が何人も働いていて私を見ると立ち止まって挨拶をして通り過ぎて行く。今日は何かあったのかしら?と思いながら自分の部屋へと向かった。
遅くまで出掛けていたから疲れた。私はソファに倒れ込むように横になった。
♪プルプルプル…
内線電話が鳴った。重たい腰を上げて出ると執事さんからで「シャルル様から外線が入りましたので代わります…」受話器の向こうから素敵なテナーが聞こえてきた。
「マリナちゃん元気かい?
だいぶ君と離れてるような気がする。
今すぐにでも会いたいぐらいだ。」
シャルルの言葉に私は胸が苦しくなった。私もシャルルに会いたい。
声を聞いた途端、寂しさが込み上げてきて頬を伝う一筋の涙に自分でも驚く。
やだ、私ったら何を泣いてるのよ。
シャルルが変に思うじゃないっっ!仕事で緊張してたのがシャルルの声を聞いて途端ホッとして急に涙が零れてしまった。
「私も…シャルルに凄く逢い……っ」
涙で声を詰まらせてしまう。
「マリナ…?」
電話の向こうでシャルルが心配そうに私の名前を呼ぶ。
「泣いてるの?何かあったのか?」
ドタバタと電話の向こうが騒がしい。
きっとシャルルは忙しい合間に電話をしてくれてるのよね。私は心配かけてはダメだと思って言葉にする。
「何でも…ないわ。シャルルの声を……聞いたらホッとしたみたい。大丈夫よ。」
私は込み上げてくるものを一生懸命押し込めて言った。
電話の向こうでフランス語が聞こえる。シャルルが何か仕事のやり取りをしているようだった。本当に忙しいのね。こんな時間になってもまだ休めないなんて。
「すぐに戻るから一人で泣いたりしたらダメだよ。もう少し待っていてくれ。オレも君に会いたくて仕方ないよ。マリナ愛している…じゃ切るよ。」
そう言って電話は切れた。
数日離れていただけなのに、寂しさが私の胸を締め付ける。
あと数日…。別邸での仕事が終わると同時にシャルルに会える!