きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

Reve de continuation 9

「マリナ、ごめん……」

和矢は絞り出すようにそう言うとあたしを抱く腕にいっそう力を込め、言葉を続けた。

「お前の気持ちが知りたくて、試すような真似をした。シャルルから電話があったのは本当だ。けど、あいつは家賃のことは知らないって言ってた」

どういうこと?!
和矢は腕をほどき、あたしを解放する。
あたしは食い入るように和矢を見つめた。

「なんでシャルルが払ってたなんて言ったの?」

和矢は悲しげな色を瞳に映した。

「シャルルのことを忘れて欲しかった。お前をオレだけの物にしたかったんだ」

「だって、それと家賃とは何の関係もないじゃない……」

話の行き先が見えずにあたしは頭が混乱する。

「確かに家賃は直接関係ないよ。けどあいつがオレに連絡をして来たと知った時、どう思った?そして家賃はただの礼だって言われた時、どう思った?」

あたしは一人取り残されたような気持ちになった。

「それは……」

「辛そうにしてるお前を見てて、あの時のあいつの気持ちがわかった。好きな子には幸せになってもらいたいってな。
けど幸せにしてやれるのはオレじゃないってわかっててもお前をなかなか手放してやれなかった。
もし今日、一緒に実家に行こうってお前が言ってくれたらオレがシャルルのことを忘れさせてやろうって思ってた。けど、お前はもう自分の本当の気持ちに気づいてたんだな。
日本に帰ってきてからお前、ずっとぼんやりしてただろ?お前の心があいつで埋まっていくのを見てるのは堪らなかった。お前がそれに気づかないようにストレス障害じゃないかってオレは嘘までついた。ぼんやりするのはシャルルのせいじゃなくて病気のせいだって思わせようとしたんだ。急性ストレス障害なんてあいつは一言も言ってない。
オレはお前を諦めきれずにいた。
そんな時、あいつから電話が来たんだ。
家賃のことを聞いた時、あいつは知らないと言った。きっと自分がしたことでオレ達の間が拗れることを心配したんだろう。だけどきっとあいつなんだよ。
あいつに決まってる。
あいつはいつだってお前のことを真っ先に考えるんだ。
そんなあいつを見てて思ったんだ。
今のオレがマリナのためにしてやれることってなんだろうって。
あいつに頼まれて聖剣を盗んだ相手の後をつけて偶然空港まで行った時、これだと思った」

和矢は一枚の封筒をポケットから取り出し、あたしの前にスッと置いた。

「この中にパリ行きのチケットが入ってる」

あたしは目を見開いた。
和矢はあたしの頭をポンとたたく。

「自分の気持ちに素直になれ。オレはお前が好きだった。でもお前の幸せはオレといることじゃない。あいつは今でもお前のことを思っているよ。きっと一生な。だからこれでパリに行ってこい」

涙が溢れて止まらない。和矢の優しさが胸にしみる。

「ごめんね、和矢」

「泣くなよ。お前がそんなぐしゃぐしゃの顔で行ったらオレ、あいつに泣かせるなってまた言われちまう」

和矢はそう言ってハンカチをくれた。

「幸せになれよ」


つづく