きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の証50000hit感謝創作17

翌日オレは和矢の手術を一時間程で終了させた。思っていた通り肩峰靭帯を無理に繋いだような形跡があった。だが可動域の狭さはそれだけが原因ではないだろう。
すぐに治療を受けなかった事で偽関節が形成されていた。
おそらく痺れ、痛みもあったはずだが長い間放っておいたせいでこれ以上の回復は見込めないと医師に言われ、和矢も諦めていたのだろう。一口に骨折と言っても横骨折、斜骨折、螺旋骨折など様々だが中でも上腕骨粉砕はかなりの重症だ。時間が経てば経つほど完治が難しくなる。
あの時ミシェルとの事がなければすぐにでも治してやれたのにと思う反面、あの一件がなければマリナがオレの元へ来ることもなかったと思うと複雑な心境になる。友として今はオレにできる限りの事をしてやりたい。

オレはパソコンの画面から視線を外し、些か酷使しすぎた目の周辺を指で圧迫した。

「プップッ……」

静けさを破るかのように内線電話が鳴った。

「シャルル様、和矢さんが目を覚まされました。痛みがあるようですがご本人は大丈夫だとおっしゃられましていかがしますか?」

和矢の強がりは昔から変わらない。あの日、毒虫を触った和矢の手は見る間に赤く腫れていった。オレはすぐに邸医の元へと和矢を連れて行った。
だけど和矢ときたら「これぐらい痛くないよ」と今にも泣きそうな顔で強がって言っていたのを思い出した。

「わかった、すぐに行く。あぁ、鎮痛剤は結構。本人の意思を尊重してやろう」

オレは手術室の隣に併設している集中治療も行える部屋へ向かった。

「気分はどうだ?」

声を掛けるとぼんやりとした視線を彷徨わせながらオレを視界に捉えて和矢はホッとした顔をした。

「あぁ、悪くないよ。オレ、どれぐらいで動いていい?」

「痛みが気にならないならすぐにでも動いて構わないさ」

術後ベットに縛り付けておかなければいけない類いの手術ではない。過度な運動はさせられないが和矢の場合は一日も早くリハビリを開始した方がいい。

「痛てっ……」

体を起こそうとした和矢は小さく呻いた。強がるからだと心の中で呟きながら上体を起こしてやる。

「切り口は最小限にしたと言ってもメスが入ったんだ。しばらくは痛むぞ」

オレが術後のデータに目を通していると和矢が何か言いたげに声を掛けてきた。

「なぁシャルル……」

やはり痛むか。

「鎮痛剤を用意するか?」

「いや……そうじゃない」

薬棚に歩き出そうとするオレを止める。
振り返ると和矢は真剣な表情をしていた。

「昨日のことだけどお前、わざとオレとマリナを二人にしただろ?」

そのことか。
覚醒して間もないのに込み入った話をするのは躊躇いはあるが和矢は引き下がらないだろうと思って話をした。
和矢は黙ってオレの話を聞き終わるとため息をついた。

「マリナとは終わったことだ。オレはお前との関係を取り戻すためにパリに来たんだ。二度と変な気を使うなよ、な?」

そう言って和矢はオレの心にすっと入り込んでくるような笑顔を見せた。オレの誕生日に駆けつけてくれた時と同じ友の笑顔がそこにあった。ずっと心の奥にあった闇がまた一つ消えていくようだった。






つづく




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みなさん、こんにちは!
更新がだいぶ遅くなってしまってすいません時間が空きすぎて前回の話を忘れちゃいますよねf^_^;
次話も少しお時間を頂くと思いますがどうぞ最後までお付き合い下さいませ。