きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛の証50000hit感謝創作2

パリ・プラージュの会場は大きく分けて二つある。出店が多いセーヌ川右岸側のジョルジュ・ポンピドゥ道路側に車で向かった。

「人が凄いわね!何だかお祭りに来たみたい」

オレが用意した真っ白なワンピースに身を包み、目を輝かせて窓の外を見つめるマリナを見ていると乗り気ではなかったがやはり連れてきて良かったと思えた。


「車から降りたら絶対にオレから離れるんじゃないよ」


マリナはオレの方を向いてクスッと笑って言った。


「子供じゃないんだから大丈夫よ。本当にシャルルは心配性なんだから」


マリナが不安にならないようにこれまでも特に話した事はないがオレに恨みを持つ人間は少なくない。アルディが多方面で事業を展開していく中で少なからず犠牲になった人間がいるのも現実だ。


「とにかくオレから離れるないように」


広場の前に車が止まりオレ達はそこから歩いて会場へ向かった。雲ひとつない空は高く、太陽は容赦なくオレ達を焦がすように照りつけている。
辺りにいる人間がこちらを見て何やら囁き始めている。やはり目立つのは仕方がないか。人の波をかき分けるようにSPの先導で目的地へと向かった。物々しい雰囲気はなるべく避けたかったがこのビーチにSPのスーツ姿はどうしても目立つ。


「ねぇあれ、シャルル・ドゥ・アルディじゃない?」
「本当だ」
「金持ちでもこんなとこに来るのね」
「あの人、相当な変わり者らしいよ」


そんな中傷の言葉にマリナは俯き、繋いでいた手をギュッと握りしめてきた。

「シャルル……ごめんね」

その小さな手を見つめてオレもそっと握り返した。


「マリナが気にすることはない。当たらずとも遠からずだ。いちいち気にしていたら外も歩けない」

「でも……」

「好きに言わせておけばいいさ。今はオレ達の大切な時間を楽しもう」


納得はしていない様子のマリナを連れて再び歩き出した。程なくしてポールチェーンで仕切られたハンギングパラソルが見えてきた。
何もないとは思うが念のために一般の利用者と少し離れた場所を一部貸切にした。マリナを連れている以上は安全を第一に考えた。
警護のために先に到着していたオレの専属SPのクロードがオレたちを出迎えた。砂浜の上にはパラソルとチェアが置かれそのすぐ脇にはウッドデッキとテーブルセットを用意させていた。さすがに砂浜に寝転ぶわけにもいかないだろう。
マリナは一瞬立ち止まると警備に当たっていたクロードに声を掛けた。


「クロードさん、今日はありがとう」


マリナがオレの専属のSPを知っていてもおかしくはないが、なぜ彼に礼を?
得体の知れない感情がオレの中で生まれ
た。礼を言われたクロードはオレの視線に気づき困惑した様子だ。SPとは仕事上の会話以外はほとんどしない。ましてやマリナが声をかけるなど想像もしていなかったのだろう。


「いえ、私は何も」


居心地が悪そうに短くそう答えたクロードにマリナは無邪気な笑顔で答えた。


「だって朝から場所取りしてくれてたんでしょ?」


そういうことか。オレの中の得体の知れない感情は薄れつつあるがやはり良い気はしない。


「いえ、私はここで警備にあたっているだけです」


マリナの肩を抱き寄せ足早にテントの中へと入った。


「君に声を掛けられてクロードが困っている」


「どうして?」


マリナは何も分かっていない様子でオレを見上げてきた。


「ここに来る事が決まってすぐにこの一角を貸切にしたんだ。彼はその警備にあたっているだけだ。礼を言う必要はない」


「そうなの?じゃ、あんたにお礼を言わなくちゃね!ありがとうシャルル」


じゃ……か。
取って付けたようなマリナの感謝の言葉に心が騒つく。マリナはそういうつもりで言ったわけではないのは分かっている。それでもマリナの感謝の気持ちをクロードと分け合ったような気にさせられた。君の感謝の言葉でさえ独占していたい。そんなオレの心の内を君が知った時、それでも君はオレのそばにいてくれるのだろうか。






つづく