きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

聞かせてほしい6

金色に輝く一枚のカードを眺める。
印字されているCharles de Hardieの文字をそっと指でなぞる。

落ち着くまでは使っていて構わないと渡されたシャルル名義のカード。
だけど頼るわけにはいかない。
そっと机にしまうと私は編集社へと向かった。

あの日シリルと回った時の写真と取材レポートを渡しに行った。
しかし資料が少なすぎて使えないと断られてしまった。たしかに観光地らしい写真がなかったものね。

収入源が絶たれた私はなんとかアシスタントの仕事を紹介してもらい、食いつなごうと思った。こうなったら何でもしようと覚悟した。

すると松井さんが「神華先生があんたを使ってもいいって言ってるけどどうする?」と素敵なことを教えてくれた。

パリに住んでたなら暮らしぶりも聞きたいし、パリの様子をスケッチ10枚描き上げてくる条件でアシに使ってもいいと言われたの。道具を揃えるのに使いなさいとお金も渡されて帰って来た。

当面の収入も確保出来て一安心した。

しかし暮らしぶりねぇ…。
パリで生活するオシャレな感じがいいのよね…。
でも実際は辛い思い出も多かった。
私はなかなか筆が進まずに何日か経ってしまっていた。
10枚も描くって相当よ!
どうしたって描いてるうちにシャルルを思い出してしまって、そこで止まってしまう。

気付くとシャルルを描いていた…。
バラの花がふわっと咲いたような笑顔に、天使のようなカーブを描いた頬。

私の頬を落ちる温かい涙が…描いたシャルルの笑顔に一粒、二粒と落ちて彼の笑顔が滲んでしまった。
ダメだわ…私にはまだ描けない。

今頃何しているかしら…

何の前触れもなく突然、別れてしまった。

だから余計に最初は実感がなかった。


今になって寂しさが、孤独が、私を飲み込んでいく。


それでもシャルルが平和でいてくれるならそれでいい…。


ピンポーン…ドンドンドンッ!

もう誰よ?人が感傷に浸ってるって時に!手の甲で涙を拭うと玄関に向かった。

「誰?」そう聞くのと扉が開けられるのとが同時だった。
私は驚きのあまり、言葉がすぐには出ない。


やっと絞り出せたのは一言だった。

「どうしたの…?!」


つづく