きらのブログ

まんが家マリナシリーズの二次創作サイトです。

愛は記憶の中へ 14

 

驚いたわ。まさか本当にマリナって子が大使館にいるとは思わなかったけど、無理にでもシャルルさんについて来て正解だったわね。何よりシャルルさんが見つけるより先にこっちから仕掛けることがてきてよかったわ。
あのマリナって子はシャルルさんに会いに来たのかもしれないけど残念だったわね。2人がどんな関係なのかは知らないけど、あたしの邪魔だけはさせないわ。
のこるはパスポートの再発行問題だけね。
思わず大使館までついて来ちゃったけど、どうにか手続きを引き延ばすことはできないかな。
そうすれば明日から大使館は休館になって、いやでも年明けまではパリに残ることになる。あとはシャルルさんとの関係を進展させられれば、もしかして、もしかするかもしれない?!

「あそこ空いてるけど!さっさとしてくれないかしら!使わないなら先に行かせてもらうわよ」

40代半ばの女性がトイレの奥の方を指差しながら捲し立てるように言ってきた。

「あ、ごめんなさい。先にどうぞ」

慌ててあたしは列から離れた。
その女性は追い越しざまにチッと舌打ちをしてカツカツとヒールを鳴らしながら歩いて行った。あの人も盗難にあったのか、イライラしてるみたいね。
後ろ姿を見ながらクスっと笑いが溢れた。
あわてて口元を手で隠した。
いけない、いけない。
こんな所で笑みを浮かべてたら怪しい人間だと思われちゃう。
ただでさえ目立つ人と来ているんだから、特に注意しなきゃだわ。
あとで何を言われるかわからない。
さいわい他に並んでいる人は何も見ていないと言わんばかりに平然とただ列にならんでいるだけだった。
余計なことに関わりたくないオーラを出している。
みんないわゆる日本人で、確かにここはパリの中心でありながら日本なんだなと妙に納得した。
だけどあたしは違う。
ようやく貯めたお金で憧れのパリにやって来てすぐにカバンを盗まれてしまった。
なんてついてないんだろう!?って思ったのも束の間、あたしはビックチャンスをこの手に掴んだ。
恐ろしく美形のフランス人に助けられ、なぜだかここ数日は彼の家に住まわせてもらっている。
おそらく彼はあたしを気に入ったんだと思う。そういえばフランス男は日本女性が好みって聞いたことがある。
きっとシャルルさんもそうなんだろうな。
しかも家っていうのが、もはや家なんてもんじゃない。
あれはもうお屋敷というレベルよ。
部屋は数えられないほどあるし、使用人は何人もいる。しかも食事は専属のシェフが作ってくれるし、出かける時は運転手付きの高級車。
これを逃したら二度とチャンスはないわ。
あっ、でもあのマリナって子もパスポートを盗まれたかもしれないんだった。
もしカウンターに立ち寄った時にシャルルさんと出会したら大変だわ。
あたしは慌ててトイレを出た。

 

つづく